1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトデ卵成熟促進因子によるcell-free系での卵核胞崩壊の誘起
Project/Area Number |
61540537
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
岸本 健雄 岡崎共研機, その他, 助手 (00124222)
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Keywords | 卵成熟促進因子 / MPF / 核膜崩壊 / 染色体凝縮 / 単離核 / 無細胞系 / アフリカツメガエル卵 / バフンウニ卵 |
Research Abstract |
卵成熟促進因子(MPF)は、種々の動物の分裂期にある細胞内に存在し、卵細胞の成熟分裂と体細胞の有糸分裂とに共通の分裂中期誘起物質であり、その作用は動物種を問わず互換性がある。こうしたMPFは、ヒトデ卵では分子量約30万の蛋白質であることが筆者らの最近の研究によって判明している。MPF活性は、未成熟卵内に微小注射すると卵成熟がおこることによって生物検定されるが、MPFが卵核胞崩壊をひきおこす機構は全く不明である。そこで本研究においては、MPFの作用機構を解明するための第一歩として、MPFが単離核において核膜崩壊と染色体凝縮とをひきおこすことのできるcell-free系を確立することを目ざした。 本研究の目的とするcell-free系には、単離核と、それを培養するための細胞質抽出物とが必要であり、しかも両者の調製法が妥当であることが必須である。そこで細胞質分画としては、Newportらの方法に従って、アフリカツメガエル成熟卵を遠心力によって破壊しその上清(MPFを含む)として得た。他方、単離核としては、まずChiba and Hoshiの方法に従って、イトマキヒトデ未成熟卵をMgを含む低調の蔗糖溶液中でライシスさせることにより、ヒトデ卵核胞を得た。しかし単離ヒトデ卵核胞は、機械的刺激に対してきわめて弱く、上述の細胞質分画とは混合するだけで破壊されてしまい、実験が成立しないことが判明した。そこで次に、バフンウニ未受精卵をポリアミンを含む低調の塩類溶液中でダウンスホモゲナイズすることにより、ウニ雌性前核を得た。これに上述の細胞質分画とクレアチンキナーゼを含むATP再生系とを加えたところ、単離ウニ前核において核膜崩壊と染色体凝縮とがおこることがHoechst33342染色によって確認された。今後は、こうしたcell-free系におけるMPFの役割を調べ、MPFが核膜崩壊と染色体凝縮を誘起する機構を解明していく予定である。
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[Publications] T.Kishimoto: Exp.Cell Res.163. 445-452 (1986)
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[Publications] S.Miyazaki: Develop.Biol.118. 259-267 (1986)
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[Publications] T.Kishimoto: Methods in Cell Biology. 27. 379-394 (1986)
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[Publications] T.Kishimoto: Advances in Invertebrate Reproduction. 4. 257-264 (1986)
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[Publications] 岸本健雄: 生物物理. 26. 157-167 (1986)
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[Publications] 岸本健雄: 細胞工学. 5. 838-840 (1986)