1986 Fiscal Year Annual Research Report
齧歯類の嗅覚情報による生殖制御の行動内分泌学的研究
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61540542
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 武二 東大, 教養部, 教授 (90012335)
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Keywords | マウス / マーキング行動 / 尿 / 性誘引物質 / 包皮腺 |
Research Abstract |
1.雄マウスのにおいつけ行動の解析 雄マウスは生息環境に活溌に尿によるマーキング行動を行なう。本年度は生殖能力とマーキング行動とを関連付けながら、他個体のにおいの影響を調べた。雄に、自己のにおいのついた環境、他個体のにおいのついた環境およびにおいのない環境を提示して尿マーキングの頻度を比較したところ、正常雄,去勢雄ともに自己のにおいのある環境での頻度が低下した。このことは自己のにおいの有無がマーキング行動を調節していることを示す。他個体のにおいの下でのマーキングは、他個体が去勢雄である場合の方が、正常雄である場合よりも頻度が高まる。これは攻撃行動とは逆相関であり、尿マーキング行動が従来唱えられていた攻撃傾向の表出であるという考え方を否定するものである。以上は単独飼育マウスでの結果であるが、一方集団飼育下の雄は、自己のにおい環境と、見知らぬ雄のにおい環境とでマーキング頻度に差が見られない、このことから、雄マウスのマーキング行動は、本来群居性であるマウスの集団形成行動に関連していることが考えられる。 2.雄マウスの性誘引物質 正常雄マウスの尿中に雌を誘引する物質が含まれていることが報告されているが、この物質は去勢雄の尿と混合しないと効力を持たない。我々は排出尿中に包皮腺分泌物が混入していることに着目し、正常雄ならびに去勢雄の尿、さらにそれぞれの雄の包皮腺を除去したものの尿、またそれらを組合せたものについて雌誘引性の比較を行った。その結果、尿中のアンドロゲン依存物質と、包皮腺分泌物中のアンドロゲン非依存物質の両者が同時に存在する時のみ誘引性を持つことが明らかとなった。このうち、包皮腺由来の物質は、分泌後何らかの変性によって有効物質に変ることも示された。以上の研究は62年度も継続する。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Masashi Daumae: Zoological Sciences. 3. 1103 (1986)
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[Publications] Kyoko Ninomiya: Zoological Sciences. 3. 1103 (1986)
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[Publications] Masashi Daumae: Animal Behaviour. (1987)