1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61550447
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
江上 徹 九州産大, 工学部, 助教授 (60069565)
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Keywords | リビングルーム / モダンリビング / 公私室型 / 空間構造 / 接客 / だんらん / 起居様式 / 多目的空間 |
Research Abstract |
最近、(1)接客と家族生活の重なり、(2)起居様式の二重化、(3)"だんらん"以外の多様な行為の展開、等への不適応をテコとした、リビングルーム(以下L)への批判的論議が盛んである。そしてその多くが、接客室や家事室の設置といった空間分化に伴うLの機能の純化によってそれらの問題の解決を計ろうとしている。しかしそれでは一面的に過ぎよう。元々、我国のLの源流である欧米のLiving Roomは、接客をも含んだ多目的な空間として誕生した。それは二重の意味に於てである。即ち、19世紀までの小規模住居に於ける、他に使用するべき部屋が無い為という消極的多目的性と、20世紀初頭に、R.アンウィンによって提起された、形式化したParlourを否定し、合理的住生活を目指した。積極的多目的性である。戦後のモダン・リビング乃至公私室型という計画理念は、この後者の流れを汲むものである。しかし実際に供給されたLはそうした理念を十分反映したものではなく、家族のだんらんへの対応を主目標としたものであった。ところがそうしたLにあっても、それは単なるだんらんの場ではなく、更衣や学習といった私的行為を含めた多様な行為の場となっており、家事や接客の場としても"主要な"位置を占めている。特に接客については、床ノ間付き和室のような接客用の部屋をL以外に持つ住居の場合も、Lは主たる接客の場となっており、又、Lだけを客の応対に用いる世帯はかなりあるのに対し、L以外の部屋だけを応対に用いる世帯は1%もないこと等に現われているように、Lでの接客には現在の生活様式に規定された必然性があると考えられる。こうした接客を含めたLでの行為の多様性は、そこでの起居様式の多様性をも要請している。更に、接客との関連でいえば、単にLの規模やしつらえだけでなく、外部からのアプローチの独立性やKとの関係等、住居全体の空間構造をも問題にしてゆくべきである。
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[Publications] 江上徹: 日本建築学会研究報告 中国・九州支部第7号. 第7号・3. 93-96 (1987)
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[Publications] 江上徹: 日本建築学会大会学術講演梗概集. 87-88 (1986)
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[Publications] 江上徹: 九州産業大学工学部研究報告. 第23号. 123-133 (1986)