1988 Fiscal Year Annual Research Report
クラウン化合物を含むリン脂質配向体の電位構造と機能
Project/Area Number |
61550586
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古澤 邦夫 筑波大学, 化学系, 助教授 (90015561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 英夫 電子技術総合研究所, 電気化学部, 主任研究官
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Keywords | クラウンエーテル / ベシクル / イオン選択性 / リン脂質 / ゼーター電位 / 電気泳動 / 錯形成 |
Research Abstract |
今年度はクラウンエーテル化合物を混合した各種リン脂質ベシクルのイオン選択挙動について、ベシクル粒子の電気泳動実験より検討を行った。ここでは特に単独リン脂質(PC)へのクラウンエーテル混合効果の他に、PC-PS-クラウンエーテル混合ベシクルの結果をPC-PS混合ベシクルの結果と比較した。また本実験ではベシクル試料に粒子径が大きく、かつ粒子径分布の狭いものが得られるExtrude法で得られるベシクルを使用した。 1)先ず、PCとクラウンエーテル化合物の重量組成比を変化させて得られたベシクルのζ-電位と各種塩濃度の関係を調べると、クラウンエーテル混入ベシクルでは金属カチオンが粒子表面のクラウンエーテル基と錯形成してζ-電位を正側へシフトさせた。その効果は金属イオンの種類に大きく依存し、Ba^<2+>>K^+>Li^+の順で顕著となり、また金属イオンやクラウンエーテルの濃度によっても影響された。 2)PC-PS-クラウンエーテルの混合ベシクルの結果をPC-PS混合系の場合と比較すると、PC-PS混合系ではPS混合の効果は見られないのに対し、PC-PSクラウンエーテル混合系では、クラウンエーテル量は常に一定にも関わらず、ζ-電位に大きな変化が認められた。即ち、クラウンエーテルを混合した場合に限り、PS含有量が増大すると、K^+イオンの増大と共にζ-電位が負側へ大きくシフトした。このような特異な傾向は錯形成能の高い金属イオンを流した場合に限られ、クラウンエーテルの錯形成がこの現象に関与することが示唆された。 3)2)の現象の詳細な解析は今の所できないが、ζ-電位の負側へのシフトには、PS分子中のカルボキシル基が関与すると考えられる。即ち、錯形成で生じたベシクル表面の正電荷が、その静電相互作用によって、PS分子中のカルボキシル基の解離を促進するものと予想される。
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[Publications] 古澤邦夫,安斉誓: 高分子論文集. 46. 21-27 (1989)
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[Publications] Kunio,FURUSAWA;Hideo,MATSUMURA: Adv.Colloid Interface Science. (1989)
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[Publications] Kunio,FURUSAWA;Etsuo,TOBORI;Sei,HACHISU: Journal of Chemical Society.Faraday Transition 1. 84. 4397-4405 (1988)
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[Publications] Hideo,MATSUMURA;Kunio,FURUSAWA: Journal of Colloid and Interface Science. 123. 385-390 (1988)
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[Publications] Takeshi,NASHIMA;Kunio,FURUSAWA: Chemistry Letters. 1253-1256 (1988)
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[Publications] 古澤邦夫,白井進之助,尾崎正孝,北原文雄: 油化学. 37. 632-639 (1988)
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[Publications] 古澤邦夫: "機能性高分子エマルション;その新しい展開" 化学工業社, 415-426 (1988)