1986 Fiscal Year Annual Research Report
酵母細胞の増殖制御機構-解糖系バイパスの酵素活性制御機構と機能-
Project/Area Number |
61560120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 幸作 京大, 食糧科学研究所, 助手 (90142299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 守彦 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (00027187)
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Keywords | 酵母の増殖機構 / メチルグリオキサール / グリオキサラーゼ【I】 / グリオキサラーゼ【II】 / 解糖系バイパス / プロテインキナーゼ |
Research Abstract |
酵母Saccharomyces cerevisiae DKD-5D-Hにおける細胞毒メチルグリオキサール(MG)の代謝経路(解糖系バイパス)を構成する酵素の活性と、酵母細胞の増殖との関連を検討した。まず、MGの代謝経路を検討した結果、従来知られていたグリオキサラーゼ系(グリオキサラーゼ【I】とグリオキサラーゼ【II】より成る)とは別に、MGをラクトアルデヒドを経て乳酸に転換する還元・酸化経路の存在を見い出し、この経路に含まれる2種の酵素(MG還元酵素とラクトアルデヒド脱水素酵素)の性質を明らかにした。酵母の細胞増殖と上記2経路(グリオキサラーゼ系と還元・酸化系)との関係を検討した結果、グリオキサラーゼ系の活性変動が酵母の細胞増殖と密接に関連していることを見い出した。即ち、酵母CDC変異株を用いた実験より、グリオキサラーゼ【I】活性は酵母の分裂・増殖時に顕著に増大し、増殖停止状態で極端に低下する。グリオキサラーゼ【I】の活性は、酵母細胞を強力な発癌のプロモーターであるフォルボールエステルに接触させることによって増大する。また、増殖停止状態にある細胞内には、グリオキサラーゼ【I】活性を低下させるタンパク性因子が存在することなどを明らかにした。他方、グリオキサラーゼ【II】の活性は、グリオキサラーゼ【I】の基質であるヘミメルカプタール(MGとグルタチオンの非酵素的縮合物)によって強くフィードフォーワード阻害を受けること、及びグリオキサラーゼ【I】とは逆に、フォルボールエステルによって不活性化されることを見い出した。フォルボールエステルによって引き起こされるグリオキサラーゼ【I】の活性化とグリオキサラーゼ【II】の不活性化は癌細胞においても認められている。以上の結果より、グリオキサラーゼ系と細胞増殖との関連が強く示唆された。酵母のグリオキサラーゼ系の活性制御機構を遺伝子レベルで解明するため、グリオキサラーゼ【I】の遺伝子を単離した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kousaku Murata: Agric.Biol.Chem.150. 135-142 (1986)
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[Publications] Kousaku Murata: J.Ferment.Technol.64. 1-4 (1986)
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[Publications] Kousaku Murata: Agric.Biol.Chem.50. 1055-1056 (1986)
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[Publications] Kousaku Murata: Eur.J.Biochem.157. 297-301 (1986)
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[Publications] Kousaku Murata: Agric.Biol.Chem.50. 2381-2383 (1986)
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[Publications] 村田幸作: 蛋白質・核酸・酵素. 31. 1010-1021 (1986)