1987 Fiscal Year Annual Research Report
ヒメヤシャブシ及びオオバヤシャブシ林分の花粉を含む純生産量と再生産機構の研究
Project/Area Number |
61560177
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
齋藤 秀樹 京都府立大学, 農学部, 助教授 (20026636)
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Keywords | 花粉 / 有性生殖 / 再生産 / 純生産量 / 乾物生産の配分 / ヒメヤシャブシ / オオバヤシャブシ / 現存量 |
Research Abstract |
乾性地の先駆種であるハンノキ属2種の林の乾物生産及び花芽から種子に至るまでの生殖器官各部分の数的関係を解析した. 滋賀県野洲町のヒメヤシャブシ低木林Pと間県土山町のオオバマシャブシ幼齢林Syで, 前年度と同じ9月下旬に伐木調査, 毎木調査, 枯死量調査などを行い, 物質収支表を作成し, 地上部の純生産量を推定した. P林の純生産量は15t/ha・y, Sy林は21t/ha・yであった. この地域の森林の値は, 根を含めて18t/ha・y前後であることから, 本調査の表層土を欠く立地条件の林分の数字としては, 若い林であることを差し引いても, 著しく大きいといえよう. この純生産量のうちで現存量増加量にまわるのはP林が49%, Sy林が65%で, この両林の差は林の発達程度の違いに起因している. P林は林齢14年生と若いが, この木の寿命から考えればかなり成熟した林といえるからだ. 一方, オオバヤシャブシは高木林を形成する. 生殖器官の純生産量はP林が0.47t/ha・y, Sy林が1.27t/ha・yで, これらの値自体はかなり大きいが, 林の純生産量が多いので, 割合では3%と6%にすぎなかった. 生殖器官の値のうち, 雄性がしめる割合が高くてP林69%, Sy林86%になる. 両樹種は微小種子で風力散布であることに関係がありそうだ. しかし1987年は雌花序の落下率が高いことも大きな原因である. この落下率はP林43%, Sy林68%にも達した. P林について1987年と前年の値を列記すると, 花粉粒2.5×10^<13>と2.1×10^<13>, 雌花序1.4×10^6と1.1×10^6, 種子8.4×10^9と9.8×10^9であった. 故に, 雌花序1個に対して形成された花粉粒数は, 両年に等しかったにもかかわらず1987年の種子生産数が少いのは受粉受精率の低下が主因で, 開花期の雨天続きを考えた. 来年度も本年度と同じ調査を行って, 1988年の純生産量を求めて2か年の違いを考察する. オオバヤシャブシは他に壮齢と老齢の林において生殖器官生産量をトラップ方で測定している.
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