1986 Fiscal Year Annual Research Report
酵素機能を模倣するポルフィリン触媒によるリグニン分解の基礎研究
Project/Area Number |
61560193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 幹夫 京大, 木材研究所, 講師 (50027166)
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Keywords | リグニン / ポルフィリン / オキシゲネーション / 芳香核開裂反応 / 反応機構 / 一電子酸化 / ベラトリルアルコール / ペルオキシダーゼ |
Research Abstract |
本研究の目的は酵素機能を模倣するバイオミメティックポルフィリン・金属錯体を使って、リグニンを分解するための基礎的知見を集積することにある。まだ、難分解性リグニンの完全分解は酵素的にも人工酵素モデル(ポルフィリン)系を活用しても成功していない。その理由として、リグニンはフェノール性高分子であり、触媒的酸化反応中、再重合が生ずること、および酵素やポルフィリン触媒が発生する活性酸素中間体によって損傷を受けることによると考えられる。しかし、最近の研究から得られた基礎的知見をまとめると次のようになる。 1.人工酵素モデルとしての合成型鉄・ポルフィリンを使用し、リグニンモデル化合物(β-1,β-5,β-0-4等)のCα-Cβ結合切断反応を証明し-電子酸化理論を提案することに成功した。この酸化理論は酵素反応系からのものと独立して提案したものであるが両者の理論は完全に一致している。 2.次に、有機溶媒系の酸化反応は、実用的ではなく、かつ重合化も促進されているので、水と空気中の酸素を活用する反応系を考え、実際に非フェノール性化合物(ベラトリルアルコール)の芳香核開裂反応を研究した。その結果、従来の有機・生化学的な芳香核開裂反応〔カラコールやフェノール部分の開裂〕とは全く異なった開裂反応を証明することができた。 3.この非フェノール性基質の環開裂反応の機構については、世界的にも注目されているが明確な証明実験は成されていない。そこで、【^(18)O】(重酸素原子)で標織した水と酸素分子を使って、開裂生成物を調べたところ、水と酸素分子から一個づつ重酸素原子がとり込まれているという新知見が得られた。反応機構も一電子酸 理論によって統一的に説明することができ、リグニン分子中の芳香核の開裂反応機構もこのモデル系によって説明可能となった。
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Research Products
(2 results)