1986 Fiscal Year Annual Research Report
電気伝導と気体透過を使った木材の加工・処理性に関する基礎研究
Project/Area Number |
61560197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堤 寿一 九大, 農学部, 教授 (00038209)
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Keywords | 電気伝導 / 気体透過 / 材質評価 / 材質指標 / 木材組織 / 木材構造 |
Research Abstract |
電気伝導率を、北海道産広葉樹材20樹種とカラマツ材の構成要素率,細胞壁率,および比重との関係で検討した。その結果、(1)樹種による電気伝導率の相違に、構成要素率の影響を認めず、(2)含水率一定のとき、壁率や比重と電気伝導率との間に相関関係がない。また、電気伝導率への含水率の関与は比重と無関係で、(3)単位体積当たりの水分量が一定のとき、細胞壁量を示す指標と電気伝導率との間に極めて高い相関関係を認めた。また、(4)広葉樹材細胞壁の電気伝導率は樹種間にバラツキが見られた。そこで、カラマツ材を使って各年輪ごとに電気伝導率を求めたところ、(5)電気伝導率の樹幹内分布はおおよそ比重の分布と対応するものの、未成熟材部でのバラツキにはミクロフィブリル傾角が寄与することがわかった。以上のことから、細胞壁の質的構成を考慮する必要性を一部に認めるにしても、電気伝導率が細胞壁量を的確に示すことが明らかである。 空気透過率が道管の材中体積割合と径,管孔配列,および比重との関係で検討され、各因子と真の空気透過率との間に相関関係が認められなかった。一方、広葉樹材の模式的空気透過径路にPettyの2要素モデルを使い、1)Klinkenberg式に基づいて求めた道管半径【r_l】と実測値【r_v】を比較し、2)単位横断面積当たりの道管数と半径の実測値から道管の比透過率を算出し、比透過率の実験値とを比較した。その結果、1)の検討で20樹種が【r_l】>>【r_v】,【r_l】≒【r_v】,および【r_l】<<【r_v】の3グループに分けられた。この3グループのそれぞれが道管径のバラツキ、せん孔の構造、チロースなどによる道管閉そくなど、透過径路にかかわる構造を的確に反映していることが明らかになった。また、2)の検討で、広葉樹材の道管閉そく率が簡単に算出できることを明らかにした。 次年度では上記の成果をもふまえ、通導・透過径路モデルを提示し、材質指標確立に資する。
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