1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61560227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 終五 東大, 農学部, 助手 (40111489)
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Keywords | ナマコ / コラーゲン / 微細構造 / 貫入強度 / 体壁 |
Research Abstract |
水産無脊椎動物は特有の味,テクスチュアを持つが、ナマコ体壁筋も水分が90%以上を占めているにもかかわらず、その歯ごたえは非常に強い。本研究はこのテクスチュアの発現機構の解明を試み、その独特の強度を維持するための貯蔵条件の設定の資とすることを目的とした。 1.マナマコStichopus japoricus体壁筋から常法により超薄切片を作製し、鉛染色を施して電子顕微鏡的観察を行った。その結果、マナマコ体壁筋中にはコラーゲン線維が存在すること,この線維は約60nm周期の横紋構造をとること,この点で他動物種のものとはとくに異ならないこと,などが明らかとなった。ただし、このコラーゲン線維の分布はまばらで、空間全体がきわめて疎の様相を呈していた。タンパク質組成を調べてみたところ、コラーゲンを含むストローマ画分が全タンパク質の約30%を占めていた。 2.コラーゲン含量につき貯蔵中の経時変化をみたところ、有意の傾向は認められなかった。したがってナマコ類の体壁でよく観察される貯蔵中の軟化現象は、コラーゲンの分解にはよらないことが示唆された。 3.生理的な実験から、ナマコ類の体壁筋の硬さの変化には粘性が大きく関与し、その粘性が【Ca^(2+)】,【Mg^(2+)】などの陽イオンの影響を強く受けることが報告されている。そこで、2mm厚のマナマコ体壁筋につき、直径1mmの円筒状プランジャー付きのサン科学社製R-UDJ-DM型レオメーターを用いて2cm/minの速度、種々の濃度の中性塩存在下で貫入強度を測定した。その結果、まず体壁筋の強度は、中性塩の非存在下で0.6〜1.4kgであった。次に0.1MのNaClやKClを添加すると強度は33〜52%に急減し、さらにNaClでは0.3M,KClでは0.4Mで強度が見かけ上消失した。一方、Ca【Cl_2】やMg【Cl_2】といった中性塩も0.1Mまでは軟化作用を示したが、それ以上の濃度にしたときでも生筋の50%以上の強度がみられた。
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[Publications] 苅谷豊,渡部終五,落合芳博,S.スリカンタ,橋本周久,村田克己: 結合組織.