1986 Fiscal Year Annual Research Report
エビ類幼生の各成長段階における有機燐剤耐性の変動とその原因の解明
Project/Area Number |
61560235
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 邦男 九大, 農学部, 教授 (30038195)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 雄治 九州大学, 農学部, 助手 (70176874)
今田 信良 九州大学, 農学部, 助手 (60038247)
|
Keywords | クルマエビ幼生 / 有機燐剤 / 毒性 / 代謝能 / コリンエステラーゼ阻害 |
Research Abstract |
クルマエビの各幼生(ノープリウス,ゾエア,ミシス,ポストラーバ【P_2】,【P_5】,【P_(10)】,【P_(20)】および【P_(30)】)を供試生物とし、わが国の代表的な有機燐剤であるフェニトロチオン(通称スミチオン)に対する各幼生の耐性とその代謝能との関連性を調べるとともに、フェニトロチオン(FS)とそのオキソ体(FO)を供試して各幼生のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)に対する阻害性を比較検討した。 1.毒性試験: 各幼生をそれぞれ数段階濃度のFS(0.2〜10,000ppb)海水に曝露した場合、24-時間L【C_(50)】値はノープリウスとゾエアでは1,840ppbであったが、ミシスではその1/6の324ppb、さらにポストラーバ期に入ると約1/2,600の0.7ppbのレベルヘと、FSに対する耐性は成長段階が進むに従って急激に低下した。 2.代謝実験: 水中のFSは各幼生によって速やかに吸収されたが、ゾエアでは短時間の曝露で平衡状態となり、その大部分が原体のままで存在した。しかし、成長が進みポストラーバ期に入ると脱メチル体、加水分解物とその硫酸抱合体およびグルコシド抱合体が生成されるなど、解毒能が高まったが、他方著しく毒性の強いオキソ体(FO)の生成が認められた。 3.コリンエステラーゼ阻害実験: 各幼生に9倍量の0.25Mショ糖-10mMTris緩衝液(pH7.5)を加えてホモジナイズし、各全身ホモジネートに数段階に亘る適量のFSとFOを添加し、それらのAChEに対する阻害性を比較したところ、各成長段階の幼生間に大きな差は認められなかったが、FSの50%阻害濃度(【I_(50)】値)がいずれも130〜240μMであったのに対して、FOの【I_(50)】値は13〜21nMであり、FSに比べて8,000〜17,000倍も高い阻害性を示した。これらの結果は、幼生の成長に伴う有機燐剤耐性低下の主原因がオキソ体生成能の昂進にあることを示す。
|