1987 Fiscal Year Final Research Report Summary
近代沖合漁業の発展過程における地主・利貸資本の運動形態及び果した役割の解明-兵庫県・但馬・香住町, 長家, 植田家文書の研究-
Project/Area Number |
61560252
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Agro-economics
|
Research Institution | Gifu City Women's College |
Principal Investigator |
田中 正紀 岐阜女子短期大学, 共通学科, 講師 (70155167)
|
Project Period (FY) |
1986 – 1988
|
Keywords | 組合共販 / 共販手数料収入 / 漁港施設の大規模化 / 海外出漁 / 漁船の大型化 / 銀行による漁業金融 |
Research Abstract |
今年度は昭和戦前期に係わる史料を分析する計画であったが, 史料の制約上, 計画を一部変更して実施した. まず当地における漁業組合では, 大正元年より漁獲物の共同販売事業が開始されたが, この組合共販の大正元年から昭和戦前期までの経営内容について, 漁業組合運営との関連性を重視しながら分析を行なった. 大正元年から昭和7年までは, 共販事業は組合運営全体とは別会計で営まれ, 手数料も低かったが, 昭和8年以降は共販事業が組合会計にくみ込まれ, 共販手数料も大幅に値上げされた. その結果, 漁業組合全体の収入に占める手数料収入の比率が著しく増大し, 共販手数料が当時の組合運営を支えていた事が判明した. 当時はちょうど海外(沿海州沖合)出漁が行なわれ, それに備えるための漁港施設の大規模化・諸機能の充実が要請され, 実行された時期でもあった. そしてそれに要する費用は, 共販手数料の値上げにより補てんされていたことが明らかとなった. 折りしもこの時期と前後して, 当地においては沖合漁業に係わる地主・利貸資本のヘゲモニーが, 沖合漁業船主, 加工業上層漁業資材製造業者等の事業家のそれにとって替わられたのである. これは即ち従来から強調されてきた組合共販の意義(商人資本への対抗組織としての高価格維持機構)に, 新たな沖合漁業発展上, より積極的な意義が付加されたものと解釈出来よう. また海外出漁は, 生産手段である漁船の大型化をも要請されたのであるが, この大型化に要する資金は主として地元銀行(現但馬銀行)の融資により, 調達されていた. 地主・利貸資本が銀行の主な出資者となっていた大正末期頃までは, 銀行による漁業金融は僅少であったが, それらの層が銀行から退くや否や, 地元銀行による漁業金融は急速に増大していったことが明らかとなった.
|
Research Products
(1 results)