1986 Fiscal Year Annual Research Report
暑熱環境下における雌家畜不妊症(無発情)の発生機序
Project/Area Number |
61560294
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金井 幸雄 筑大, 農林学系, 助手 (40015871)
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Keywords | 暑熱環境 / 高温ストレス / 発情 / LHサージ / エストロジェン / シバヤギ |
Research Abstract |
日本在来のシバヤギを供試動物に用い、まず、暑熱環境下で見られる種々の発情異常や無発情を実験的に作出するための基本条件について検討した(実験【I】)。次いで、25℃(常温)、35℃および40℃(高温)の各温度条件下における発情現象と血中性ホルモンの動態を比較して、高温ストレスによる発情現象の抑制がどのような内分泌学的変化に関連しているかを調べた(実験【II】)。得られた成績は以下のとおりである。 1.体温の上昇が始まる高臨界温度は、シバヤギでは30〜35℃の間にあり、35℃以上の高温負荷によって熱ストレス状態が得られるが、40℃では採食量が著しく減少するため、この温度域で長期の実験を行う場合には栄養条件の低下による二次的影響を考慮しなければならない。 2.35℃では発情発現の抑制は起らず正常な長さで性周期が維持された。一方、40℃では約半数の動物で発情の発現が完全に抑制され、残り半数の動動では発情発現が遅れて性周期が有意に長くなった。 3.高温下では発情が短くなるという従来の定説に反して、35℃および40℃の2つの高温区では発情持続時間が常温区に比べて有意に長くなった。 4.性周期におけるLH分泌は高温負荷によって変化しなかったが、高温区では発情開始後に起るLHサージの成立が遅れ、この遅れは常温区と高温区の間で見られた発情持続時間の差にほぼ等しかった。 5.発情発現の直接的要因と考えられる卵巣からのエストロジェン(E)分泌は、高温区とくに40℃区で有意に減少した。 以上、本年度に行った研究から、1)高温ストレスによる発情発現の抑制は、主に卵巣レベルで発生するE生産の阻害によること、また、2)高温下では下垂体のEに対する反応性が低下して発情持続時間に変異が生じること、が明らかになった。
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