1986 Fiscal Year Annual Research Report
下垂体前葉に存在する濾胞星状細胞の機能および分化に関する研究
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61570003
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井上 金治 群大, 内分泌研究所, 助教授 (50091963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 豊 群馬大学, 内分泌研究所, 助手 (70125863)
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Keywords | 下垂体 / 濾胞星状細胞 / 分化 / 機能 / カルシウム / S-100蛋白 / ラトケ嚢遺残腔辺縁上皮細胞 |
Research Abstract |
下垂体に存在する無果粒性細胞である濾胞星状細胞(FS細胞)の機能および分化に関して以下の様な実験を行った。1.腎皮膜下に移植した下垂体の光学および電子顕微鏡による観察。2.【Ca^(++)】-ATPaseの細胞化学。3去勢および正常ラットの下垂体、特にラトケ嚢遺残腔辺縁上皮細胞の免疫細胞化学的観察。この結果まず腎皮膜下に移植した動物の下垂体からは横紋筋が出現し、この横紋筋線維は下垂体の前葉および中間部から発生してくる。電子顕微鏡および光学顕微鏡的免疫細胞化学によると出現してくる横紋筋線維はS-100蛋白陽性の濾胞星状細胞から分化してくることが判明した。このS-100蛋白陽性のFS細胞はグリア特異蛋白のGFAPを持つことからグリア細胞に近い細胞として考えられて来たが、今回の結果は、グリア由来の細胞が細胞培養下で横紋筋に変化するとの報告を考慮して、FS細胞の少なくとも1部の細胞はグリア様の細胞であり腎皮膜に移植した下垂体におい筋細胞に分化したのであろう。一方、【Ca^(++)】-ATPaseの細胞化学を行うと下垂体前葉では腺細胞の細胞間隙に多く認められるが、特にFS細胞と腺細胞の間に多く反応が認められる。このことは【Ca^(++)】がFS細胞に多いことと、【Ca^(++)】-ATPaseが【Ca^(++)】の能動輸送に関連した酵素であることを考慮して、FS細胞が、【Ca^(++)】の貯蔵,分泌の制御を通じて腺細胞の分泌機能の調節に関与している可能性が強い。無果粒性細胞はFS細胞の他、ラトケ嚢遺残腔辺縁上皮細胞にも存在するが、免疫細胞化学および電子顕微鏡的観察によると、辺縁上皮細胞の内、中間部側のものはS-100蛋白陽性でFS細胞に最も近く、中間部に投射している神経線維を包むことからグリア細胞の1種と考えられる。一方前葉側のものはS-100蛋白を持たず、去勢によってゴナドトロピン細胞が前葉側の辺縁部から出現してくることから腺細胞への分化能を有する幼若な細胞として考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] K.Inoue;Y.Taniguchi;K.Kurosumi: Archivum Histologicum Japonicum.
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[Publications] T.Sakai;K.Inoue;Y.Hasegawa;K.Kurosumi: Endocrinology.
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[Publications] 井上金治,谷口豊,黒住一昌: 解剖学雑誌. 61. 493-493 (1986)