1986 Fiscal Year Annual Research Report
血管系における交感神経性プリン伝達機序の解明および生理的意義に関する研究
Project/Area Number |
61570097
|
Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
村松 郁延 福井医大, 医学部, 助教授 (10111965)
|
Keywords | プリン作動性反応 / 交感神経性反応 / 血管 / 【P_2】-プリン受容体 |
Research Abstract |
摘出イヌ腸間膜動脈を経壁電気刺激すると、一過性の収縮反応が観察される。この反応はprazosinなどのα遮断薬で完全には抑制されず、約50%がα遮断薬抵抗性成分として残存した。また、あらかじめreserpineを処理したイヌより摘出した腸間膜動脈でも経壁電気刺激で収縮反応が惹起され、この反応はα遮断薬で全く影響されなかった。しかし、guanethidineや6hydroxydopamine処理で上記α遮断薬抵抗性収縮反応は消失したことより、交感神経性反応と思われた。交感神経には各種神経ペプチドが分布する。そこで、neuropeptide Y,peptide YY,substance P,VIPなど、その存在が示唆されているペプチドの関与を検討した。しかし、いずれのペプチドもα遮断薬抵抗性の収縮反応を惹起し得なかった。これらペプチドとは別に、その存在が明らかなATPは、イヌ腸間膜動脈を強く収縮し、しかもその収縮反応はα遮断薬抵抗性であった。イヌ腸間膜動脈をα,β-methylene ATPで処理して【P_2】-プリン受容体を脱感作した状態では、経壁電気刺激はα遮断薬感受性の収縮反応のみを惹起し、抵抗性成分は消失していた。ATPの収縮反応も【P_2】-プリン受容体脱感作で抑制された。一方、【P_1】プリン受容体拮抗薬8-phenyltheophyllineは経壁電気刺激やATPにより惹起されたα遮断薬抵抗性の収縮反応には無影響であった。また、α,β-methyleneATPは、外来性naradrenalineやKCIの反応には影響しなかった。以上の結果より、イヌ腸間膜動脈の交感神経性反応は、noradrenaline作動性成分とプリン作動性成分より成ること、プリン作動性反応はシナプス後膜【P_2】-プリン受容体を介して惹起されることが明らかとなった。今後は、交感神経性プリン作動性反応の生体内分布、伝達物質としてのATPの同定などについて研究を進める。
|