1986 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内カルシウム受容蛋白質における情報伝達機構の分子薬理学的解析
Project/Area Number |
61570099
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
田中 利男 三重大, 医学部, 講師 (00135443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中 充子 三重大学, 医学部, 助手 (10093139)
日高 弘義 三重大学, 医学部, 教授 (80100171)
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Keywords | カルモデュリン / カルモデュリン阻害剤 / 細胞内カルシウム受容蛋白質 / カルシウムチャンネルブロッカー / トロポニンC / パルブアルブミン / カルモデュリン依存性酵素 |
Research Abstract |
本年度は細胞内カルシウム受容蛋白質の中で特に血管平滑筋収縮反応において重要な生理的役割を果しているカルモデュリンについて、二種類の薬物を使用して、分子薬理学的にその情報伝達機構について解析した。すなわちカルモデュリン分子内にユニークな結合部位を持つ新しいカルモデュリン阻害剤HT-74を見出した。さらに、カルシウムチャンネルブロッカーであるベプリジルとカルモデュリンの直接的結合を明らかにし、その結合の特性を示した。第一に、新しいカルモデュリン阻害剤HT-74はいくつかの性質からユニークな結合部位をカルモデュリン分子内に持つことが明らかとなった。HT-74は細胞内カルシウム受容蛋白質の内トロポニンCやパルブアルブミンには結合せず、カルモデュリンに特異的に結合することが見出された。この知見はすでに報告されているカルモデュリン阻害剤と全く異なるユニークな特徴であり、今後細胞内カルシウム受容蛋白質の比較研究に有用な阻害剤となる。さらにHT-74のカルシウム-カルモデュリン複合体存在下におけるANSの螢光に対する効果においても従来のカルモデュリン阻害剤とは異なる結果が得られている。またHT-74は、カルシウム-カルモデュリン依存性酵素であるミオシン軽鎖リン酸化酵素やカルシウム依存性環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ等の酵素分子には作用しないことを確認した。さらにHT-74は強力な血管平滑筋弛緩作用を示し、その薬理作用にも結合部位に対応した特徴が示された。第二には、カルシウムチャンネルブロッカーであるベプリジルのカルモデュリンに対する結合をアイソトープラベルしたベプリジルを使用して解析した。その結果、ベプリジルはカルモデュリンにカルシウム依存性に結合し、その解離定数は6.2μMであることが明らかとなった。以上、新しいカルモデュリン阻害剤が二種類見出され、今後分子レベルでの研究に有用であると思われる。
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[Publications] H.Itoh: Biochem.Pharmacol.35. 217-220 (1986)
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[Publications] A.Nakai: Clinical Endocrinology. 24. 409-414 (1986)
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[Publications] T.Tanaka: Mol.Pharmacol.29. 264-269 (1986)
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[Publications] A.Nakai: Endocrinology. 119. 2279-2283 (1986)
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[Publications] M.Ito: Biochemistry. 25. 4179-4184 (1986)
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[Publications] H.Nishino: Biochim.Biophys.Acta. 889. 236-239 (1986)
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[Publications] T.Tanaka: "Platelet Activation" Academic Press Inc., (1987)
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[Publications] H.Hidaka: "Methods in Enzymology" Academic Press Inc., (1987)