1986 Fiscal Year Annual Research Report
神経伝達物質の遊離機構におけるプロテインキナーゼCの役割に関する研究
Project/Area Number |
61570104
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷山 紘太郎 神戸大, 医学部, 助教授 (70030898)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 尚亮 神戸大学, 医学部, 助手 (60178499)
|
Keywords | プロテインキナーゼC / ホルボールエステル / 神経伝達物質遊離 / 免疫相織化学 / オートラジオグラフィー |
Research Abstract |
中枢および末梢のコリン作動性神経からのアセチルコリン遊離,アドレナリン作動性神経からのノルアドレナリン遊離が発癌物質のホルボールエステル(TPA)によって増幅されることを見出した。TPAはプロテインキナーゼCを活性化するので、神経伝達物質の遊離機構におけるプロテインキナーゼCの関与が示唆された。本年度はプロテインキナーゼCの神経系における役割を分子レベルで解析するため、ラット脳組織におけるプロテインキナーゼCの局在を本酵素に対するモノクローン抗体と標識TPAを用いて調べた。ラット脳の可溶性分画から精製されたプロテインキナーゼCに対して作製されたモノクローン抗体は脳の可溶性分画内のすべての蛋白のうち、プロテインキナーゼCとのみ反応し、他のプロテインキナーゼ(サイクリックAMP依存性,サイクリックGMP依存性プロテインキナーゼ)とは全く反応しなかったので、このモノクローン抗体はプロテインキナーゼCと特異的に反応すると考えられた。このモノクローン抗体を用いた免疫組織化学によるプロテインキナーゼCの脳内分布は、海馬,扁桃体,嗅球,小脳皮質等に多く、脳幹部では少なかった。標識TPAを用いたオートラジオグラフィーでも同様に嗅球,海馬に多く、延髄,白質,橋では少なかった。免疫組織化学でさらに詳細に調べると、プロテインキナーゼCは神経細胞に存在し、グリア細胞にはほとんど存在しないことが明らかになった。小脳のプルキンエ細胞におけるプロテインキナーゼCの免疫反応では、シナプス前部の神経終末に強い反応がみられたことから、本酵素が神経伝達物質の遊離機構に深く関与していることが明らかになった。今後さらに、本酵素の局在を電顕レベルで解析することによってプロテインキナーゼCの情報伝達機構における役割を解明することができると考えられる。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Kohtaro Taniyama: Japanese Journal of Pharmacology. 40. 43 (1986)
-
[Publications] Ushio Kikkawa: Calcium and the Cell Ciba Foundation Symposium. 122. 197-207 (1986)
-
[Publications] Ushio Kikkawa: Progress in Brain Research. 69. 29-35 (1986)