1986 Fiscal Year Annual Research Report
中枢ペプチド性胃機能抑制機構に関する神経薬理学的研究
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61570107
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
大隅 義継 高知医大, 医学部, 教授 (80025634)
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Keywords | 胃酸分泌 / ボンベシン / ポリペプチド / 胃粘膜血流量 / 胃機能 / 外側視床下野 / 視索前野 / 視床下部室傍核 |
Research Abstract |
本年度は、まずボンベシンの脳内作用部位と、その機序を検討した。ウレタン麻酔ラットを用いて、胃酸分泌を指標に、得られた成績をまとめると、次のようになる。 1.左頸部迷走神経を0.5mA,3cycles/sec,0.5msecの条件下に電気刺激すると、胃酸分泌は急速に増加し、60分後には刺激前値の13.4倍に達した。この増加は、刺激の継続により150分後の実験終了時まで、ほぼ一定のレベルに維持された。胃粘膜血流量はこの胃酸分泌増加に一致して有意に増加した。 2.脳内諸部位に微量注入するボンベシンの用量を決めるため、まず本実験系での脳室内投与ボンベシンの作用の強さを検討した。ボンベシンは、その用量(3-1,000pmole)に依存して迷走神経刺激時の胃酸分泌増加を抑制した。 3.迷走神経の刺激開始60分後にボンベシン3pmoleを視索前野、前部視床下部および視床下部室傍核に微量注入すると、胃酸分泌は有意に抑制された。なかでも、視索前野内微量注入時のボンベシンの抑制効果は著しく、投与90分後の値は対照の約27%であった。 4.一方、中枢性胃機能調節に重要と考えられる外側視床下野、視床下部腹内側核および背内側核にボンベシンを投与しても、迷走神経刺激時の胃酸分泌は変化しなかった。 5.上述(4)においてボンベシンの作用の認められた視索前野、視床下部腹内側核および室傍核を含む広領域を予め電気的に破壊したラットでは、脳室内投与ボンベシンの抑制効果は現れなかった。 6.ボンベシンの脊髄腔内投与は、その大量(1,000pmole)でも迷走神経刺激時の胃機能亢進に無影響であった。以上の成績から、、ボンベシンの中枢性胃機能抑制の脳内作用部位は、予測とは異なり、視索前野を中心に、これに隣接する前部視床下部および室傍核の領域に存在することが明らかとなった。
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