Research Abstract |
通常のアクチンよりも等電点が酸性側にある異常アクチンの一次構造を知るため, HPLCによるペプチドマップの完成, cDNAの単離によるアミノ酸配列の予測を行うのが本年度の計画であった. ペプチドマップに関しては, マウスサルコーマ180細胞を用い, SDSゲルよりβ, γ, 酸性アクチンスポットを切り出して抽出し, トリプシン切断によるHPLCパターンを得た. しかし, SDSの残存によって本来のパターンと異なることが判明したので, SDS(ゲル)を使用せずに3種を分離する方法の検討を行った. ハイドロキシアパタイトは, γとそれ以外のアクチンとを分離し得るのみで, 酸性アクチンとβアクチンとは分離し得ないことが判った. その他の方法として, クロマトフォーカシング, イオン交換HPLCなども検討したが, 3種のアクチンは分離できなかった. トリプシンだけではHPLCのピークの数が多すぎるので, 現在, 3種の混じった状態のアクチン標品につき, 臭化シアンによる切断, 続いてそれぞれのトリプシンによる切断物の逆相HPLCを行っている. 一方, cDNAの単離に関しては, 正常βアクチンに対応するクローンのみしか得られていない. さらにN末対応部分まで含むクローンがとれれば, アミノ酸置換の部位が明らかになると思われる. また, 各種抗アクチン抗体の組合せにより, ウェスタンブロット上で, 6種のアクチンを区別し得ることを見出した. それによって, 180細胞, マウスメラノーマBi6細胞, ヒトサイトカラシン抵抗性KB細胞の異常酸性アクチンは, すべてβアクチンと関連したものであることが示唆された. Bi6細胞に関しては谷口らが, 実際にβアクチン由来(28番目のアルギニンの置換)であることを明らかにしている. 同じ方法により, ウシリンパ球核マトリックスの酸性アクチンは, α平滑筋アクチンであることが示唆された.
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