1986 Fiscal Year Annual Research Report
軸索内輸送を用いた中毒性神経疾患の発症機構に関する生化学的研究
Project/Area Number |
61570136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮 義璋 東大, 医学部, 講師 (50010046)
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Keywords | 軸索内輸送 / 中毒性神経疾患 / 神経毒性 / β,β´-イミノジプロピオニトリル(IDPN) / ニューロフィラメント |
Research Abstract |
神経系に毒性を有する各種薬物は、その主な作用部位により幾つかのグループに分けることができる。各群の代表的な薬物につきモデル系を作成し、その作用機構をin vivoで解析して来たが、本年はこれらうち特にβ,β´-イミノジプロピオニトリル(IDPN)について得られた結果を報告する。 1.β,β´-イミノジプロピオニトリルによる遅い軸索内輸送の障害: IDPNは遅い軸索内輸送を構成する主な蛋白のうち、ニューロフィラメント(NF)構成蛋白の輸送のみが阻害される。細胞体における蛋白の生合成には阻害が見られないので、軸索起始部にNFが蓄積する。NF輸送の阻害は完全な停止ではなく、速度が対照の約1/2に遅くはなるが遠位部への移動は継続する。 2.IDPNによるNF輸送阻害の回復 IDPNによるNF輸送阻害の回復は、投与の6週後に始まるものと推定される。投与直後に標識した場合と1及び2週間後に標識した場合との比較から、投与直後には1週間よりはやや短いNF輸送のほぼ完全な停止期間があると思われる。 3.IDPNの分割投与による阻害効果の加算; IDPNの作用には1.0g/kg前後に閾値がある。しかし投与総量は2.0g/kgであってもそれを一時期にではなく、何回かに分けて投与すると加算効果の見られることがある。即ち総量2.0g/kgを1.0+0.5←0.5に分けて4日おきに投与すると一回で投与した場合に比べて阻害効果が増強されるが、投与間隔を1週間或は2週間にすると加算効果は殆ど見られない。これはIDPN投与の直後に見られるNF輸送の完全な停止期間中に次の投与がなされると、それが閾値以下であっても効果が加算されると解釈できる。この結果からもIDPNの投与直後にはNF輸送の完全停止期間があり、その長さは4日よりは長く、1週間よりは短いという推定が支持される。
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[Publications] Komiya,Y.;Cooper,N.A.;Kidman,A.D.: Journal of Biochemistry. 100. 1241-1246 (1986)
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[Publications] Komiya,Y.;Tashiro,T.;Kurokawa,M.: Biomedical Research. 7. 345-348 (1986)
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[Publications] Komiya,Y.;Tashiro,T.;Kurokawa,M.: Biomedical Research. 7. 359-363 (1986)
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[Publications] Igarashi,M.;Komiya,Y.;Kurokawa,M.: Journal of Neurochemistry. 47. 1720-1727 (1986)
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[Publications] 小宮義璋: 神経精神薬理. 8. 395-406 (1986)
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[Publications] 小宮義璋: 医学のあゆみ. 139. 959-965 (1986)