1988 Fiscal Year Annual Research Report
軸索内輸送を用いた中毒性神経疾患の発症機構に関する生化学的研究
Project/Area Number |
61570136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮 義璋 東京大学, 医学部, 講師 (50010046)
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Keywords | 軸索内輸送 / 中毒性神経疾患 / 2.5-ヘキサンジオン / 二硫化炭素 / ニューロフィラメント |
Research Abstract |
神経系に毒性を有する各種薬物は、その主な作用部位によっていくつかのグループに分けることができる。各群の代表的なものにつきモデル系を作成し、その作用機構をin vivoで解析してきたのでその成果を報告する。 1)2.5-ヘキサンジオン(2.5-HD)による神経障害とその発症機構 2.5-HDは有機溶剤中毒の中心をなすn-ヘキサンやメチルn-ブチルケトンの共通代謝産物として神経毒性を示す本たおと考えられている物質である。2.5-HDによる神経障害はアクリルアミドと同様な典型的なdstal axpnopathy型で、大径の長い軸索の遠位部のRanvierの絞輪近位側におけるニューロフィラメント様繊維構造の蓄積と、それより遠位部の変成を主徴とする。そこで4週齢のラットに0.5%の2.5-HDを飲料水に混じて投与し、5週後に第4腰髄神経節を[^<35>SI-メチオニンで標識し、4日〜5週間経った後坐骨神経の標識蛋白をSDS-電気泳動分析した。その結果遅い軸索内輸送を構成する蛋白のうちニューロフィラメント蛋白の輸送の速度のみが増大していた。増加の程度はそれ程大きくはないが、2.5-HDを投与して5週間目では体重の減少以外に神経症状がまだ出現していない時期であるため、この所見は重要と考えられる。 2)二硫化炭素(CS_2)神経障害とその発症機構 CS_2は嫌酒薬としてよく用いられるAntabuseの代謝産物で、神経毒性を示す。その作用は2.5-HDやアクリルアミドとよく似たdving-back型の神経障害をおこすことが知られている。そこで4週齢のラットにCS_2を1週5回、9週間にわたって腹腔内投与し、体重の著明な減少と後肢の不全麻痺が発症した時点で軸索内の蛋白を放射標識し、更に5週間後に電気泳動分析してみたところ2.5-HDと同様にニューロフィラメント蛋白のみの増速が見出された。
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[Publications] Komiya,Y.;Tashiro,T.: Cell Motility and the Cytoskeleton. 9. 151-156 (1988)
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[Publications] Tashiro,T.;Komiya,Y.: Journal of Neuroscience. 9. (1989)
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[Publications] Zimmermann,H.;Tashiro,T.;Komiya,Y.;Kurokawa,M.: Neuroscience Research. 5. (1989)
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[Publications] 小宮義璋: 神経科学レビュー. 2. 363-369 (1988)
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[Publications] 小宮義璋、宮武正 編: "ニューロサイエンス、医学のあゆみだ5土曜特集" 医菌薬出版, 253-398 (1988)
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[Publications] 小宮義璋: "脳とコンピューター、第4巻" 培風館, (1989)