1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61570139
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川崎 尚 広島大, 医学部, 教授 (40034011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 一夫 広島大学, 医学部, 助教授 (00093831)
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Keywords | 虚血細胞障害 / 還元型グルタチオン / 抗酸化作用 / ATP再合成促進 / 障害保護作用 |
Research Abstract |
虚血細胞障害の保護に関する研究は、臓器移植の場合の臓器保護のみならず、虚血病態、たとえばエンドトキシン・ショックのような血流低下に伴う低酸素状態でみられる組織細胞障害保護の面からも、極めて重要である。今年度、グルタチオン(還元型:GSH;酸化型:GSSG)を中心に得られた結果は次の通りである。 1)肝組織グルタチオンを酵素法により分光光学的に測定した。ラット肝虚血90分とその後の血流再開60分における変化では、虚血時にGSHが20%減少し、血流再開によりさらに22%減少したが、この減少に相当するGSSGの生成はみられなかった。Co【Q_(10)】およびα-トコフェロール(α-Toc)前投与は、血流再開後の過酸化脂質生成を抑制することにより、虚血細胞障害を保護するが、虚血時のGSH減少をCo【Q_(10)】,α-Toc前投与ともに抑制せず、血流再開後のGSH減少を完全に抑制した。 2)エンドトキシン投与マウスの肝組織GSHも、肝の過酸化脂質増量時に減少(50%)し、この減少もCo【Q_(10)】,α-Toc投与で50%以上抑制された。以上の結果は、組織内GSHが抗酸化作用を示し、他の内在性抗酸化物質とともに、虚血細胞障害の保護に関与していることを示唆する。 3)GSHまたはその前駆体N-アセチルシステインを投与したラット肝のグルタチオン含量は、それぞれ1.3倍,1.5倍に上昇し、虚血90分、血流再開60分後のATP濃度の回復を、それぞれ1.4倍,1.7倍促進した。 4)細胞内GSH代謝に関与するGSHレダクターゼ,GSHペルオキシダーゼ活性を測定した。肝虚血と血流再開実験で変化がなかった。このことは、GSHそのものが細胞内で保護作用を示す可能性を示唆する。 以上の結果は、細胞内GSHを上昇させるGSHまたはその前駆体は虚血細胞障害を保護する可能性を示唆する。
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[Publications] Marubayashi,S.;Dohi,K.;Ochi,K.;Kawasaki,T.: Surgery. 99. 184-192 (1986)
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[Publications] Sugino,K.;Dohi,K.;Yamada,K.;Kawasaki,T.: Surgery. (1987)
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[Publications] Sugino,K.;Dohi,K.;Yamada,K.;Kawasaki,T.: Biochim.Biophys.Acta.
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[Publications] Kawasaki,T.;Marubayashi,S.: "Treatment of shock,2nd Ed.,Chaptor 8 Liver in shock" Lea & Febiger,Philadelphia,U.S.A., 242 (1986)
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[Publications] Kawasaki,T.;Sugino,K.;Marubayashi,S.: "Biomedical and Clinical Aspects of Coenzyme Q,vol.5" Elsvier Biomedical Press,Amsterdam,Netherlands, 410 (1986)