1988 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト赤血球膜陰イオン透過機構及びその病態についての蛋白質化学的研究
Project/Area Number |
61570149
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
濱崎 直孝 福岡大学, 医学部, 教授 (00091265)
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Keywords | 赤血球膜タンパク質 / バンド3 / 陰イオン透過系 / 膜タンパク質の一次構造 / 透過活性中心 |
Research Abstract |
ヒト赤血球膜陰イオン透過機構の分子レベルでの解析を蛋白質化学的手法を用いて行なっている。この陰イオン透過系の基質(すなわち、陰イオン透過系で媒介されて赤血球膜を透過する化合物)であり、リジンの選択的化学修飾剤でもあるピリドキサルリン酸を用いることで、陰イオン透過活性中心部位の選択的標識に我々は成功した。61年度、62年度は、この活性中心部位を構成するペプチドの分離精製を行ない、そのアミノ酸配列の決定を部分的に行なった。このペプチドはアミノ基未端より45個は疎水性アミノ酸残基が並んでおり、おそらく、赤血球膜の脂質二重層に埋っていると考えられた。46番目からは一転して親水性のアミノ酸が連なり、特に、グルタミン酸が多いのが特徴的であり、かなり特異的な配列をしている。このような特異的なアミノ酸配列と陰イオン透過機能との関係は明らかでなく、今後に残された問題となっていた。 本年度は、この活性中心構成ペプチドの完全な一次構造決定と、このペプチドの赤血球膜内での位置を含めた存在様式の決定を行なうことを目的として研究を始めた。一次構造決定は第10番目のアミノ酸残基を除いて完全に決定することができた。10番目のアミノ酸残基の決定はFABーMASSなどを用いて分析したが、未だに決定できてない。ピリドキサルリン酸の結合部位は18番目のリジンであった。これらの結果はJ.Biol.Chem.263,8232ー8238(1988)に発表した。 一方、このペプチドの赤血球膜内存在様式研究の過程で、「バンド3」分子内のヒスチジン残基が陰イオン透過活性発現に必須であることが判ってきた。このヒスチジン残基を化学的に修飾すると、上記ペプチドの膜内立体構造の変化が起ることを推測できる結果を得た(Biochemistry(1989)印刷中)。今後この現象をさらに追及してゆく予定である。
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[Publications] Hamasaki,N.;Kawano,Y.: Trends in Biochem.Sci(TIBS)(Review). 12. 183-185 (1987)
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[Publications] Inoue,H.;Moriyasu,M.;Hamasaki,N.: J.Biol.Chem.262. 7635-7638 (1987)
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[Publications] Moriyasu,M.;Yamamoto,M.;Hamasaki,N.: J.Biochem.103. 903-904 (1988)
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[Publications] Kawano,Y.;Okubo,K.;Tokunaga,F.;Miyata,T.;Iwanaga,S.;Hamasaki,N.: J.Biol.Chem.263. 8232-8238 (1988)
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[Publications] Igisu,H.;Hamasaki,N.;Ito,A.;Ou,W.: Lipids. 23. 345-348 (1988)
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[Publications] Izuhara,H.;Hamasaki,N.: Biochemistry. (1989)
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[Publications] 濱崎直孝: "赤血球膜蛋白質の構造と機能" 宇宙堂八木書店, 1-87 (1987)
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[Publications] 河野洋一,濱崎直孝: "続生化学実験講座8 血液(上)" 化学同人, 1-476 (1987)