Research Abstract |
本年度は胸腺過形成さらに重症筋無力症の免疫組織化学的研究を行った. 重症筋無力症の胸腺所見は, 10-15%に胸腺腫, 60-65%に過形成(胚中心の出現), 20-30%で著変なしとされている. しかし, 後二者を胚中心の有無で二つに分ける根拠は必ずしも明確でない. そこで, 我々は, この疾患の胸腺で胚中心を伴うもの(A群)10例, 伴わないもの(B群)10例, また対照として非重症筋無力症の成人胸腺8例(C群)につき, 主にホルマリン固定, また, 一部アルコール固定や凍結(-80°C)標本にて検索した. 結果は以下の通りである. (1)A, B群共にC群に比し小型ハッサル小体(K-904染色)の増加を見た. (2)A群で, 髄質上皮(K-903染色)が胚中心を伴うリンパ濾胞で圧排されていた. 基底膜(抗ラミニン, IV型コラーゲン, フィブロネクチン)染色では, これらのリンパ濾胞は拡大した血管周囲腔(PVS)にあり, 全例に基底膜の局所的断裂を認めた. (3)B群でも髄質上皮を圧排するPVSの中等度拡大があり, やはり全例で基底膜の断裂部位を認めた. (4)C群でもPVSの軽度から中等度の拡大があったが, 基底膜はほぼ intactであった. (5)Bリンパ球(MX-PanB, MB-1染色)はC群でも髄質のハッサル小体の周囲に少なからず存在したが, A,B両群では著増し, PVSと髄質にび慢性に見られた. 形質細胞(免疫グロブリン軽鎖染色)はC群ではPVSに少数存在, B群ではPVSと髄質に軽度増加, A群でも同部位に中等度の増加があった. (6)Interdigitating細網細胞(抗S-100蛋白染色)はC群では髄質のみに, A, B両群では髄質とPVSに見られ, 数も増加していた. (7)筋様細胞(抗デスミン, ミオグロビン染色)はA, B群で減少傾向にあり, 特にA群でハッサル小体周囲に集まる傾向が見られた. 以上, A群とB群の間には免疫組織化学的に本質的差異を認めず, いずれも胸腺炎の像を呈していることが分かった.
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