1986 Fiscal Year Annual Research Report
LECラット自然発症肝炎における複合免疫不全の病因論的研究
Project/Area Number |
61570163
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武市 紀年 北海道大学, 医学部, 講師 (40002133)
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Keywords | 肝炎モデル動物 / LECラット / 劇症肝炎 / 複合免疫不全 / 肝癌 |
Research Abstract |
北大生物センターにおいて、非近交系のLong-Evansラットより分離した2系の近交系ラット(LEAのLEC)のうちLECラットはヒト劇症肝炎に類似した病変を高率に発症し死亡する。この病変の特徴は生後4-5カ月齢ころに突然重篤な黄疸,ビリルビン尿,貧血,乏尿,体重減少などを呈し、血清中の直接・間接ビリルビン値およびGOT,GPT値の上昇をきたし発症後2週間以内に死亡することである。病理組織学的にも肝萎縮と肝組織全体に広範かつ多数の壊死巣が認められる。最近申請者らはさらにこのLEC系ラットが先天的にT・B細胞免疫不全を合併していることに気づいたので、肝炎発症との関連について検討している。6週齢のLECラットの剖検所見では胸腺,脾重量が同年齢のLEAラットに比べ有意に小さく特に胸腺重量は1/3以下であった。リンパ球マーカーによる検索ではLECラット胸腺中のThy1,陽性細胞数はLEBラットの2/3以下であった。さらにLECラット脾リンパ節中のT抗原(W3/13,W3/25)陽性細胞数、およびsIg陽性細胞数も同年齢のLEAラットに比べ有意に減少していた。組織学的には胸腺皮質,リンパ節濾胞や、脾の白色髄に軽度の萎縮が認められた。電気泳動法により血清中のγ-グロブリン分画を検索したところLECラットでは痕跡程度にしか検出されなかった。つぎにPHAとConAに対する脾細胞の幼若化反応をLECとLEAラットで比較した。その結果6週齢のLECラットでは同年齢のLEAラットに比較しPHAとConAに対する幼若化率が1/2-1/10に低下しており、12週齢のLECラットでも同年齢のLEAラットに比べ著明な低下が認められた。また6週齢と12週齢のLECラット脾細胞中のヒツジ赤血球に対するIgM,IgG抗体産生細胞数は、同年齢のLEAラットに比較して著明に抑制されていた。LECラットにおける複合免疫不全の合併は肝炎発症原因としてウィルス感染症,自己免疫反応の関与を示唆しており現在さらに検討中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Sasaki,M.et al.: Rat Nwws Letter. 14. 4-6 (1985)
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[Publications] 武市紀年、他: 医学のあゆみ. 133. 264-265 (1985)
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[Publications] 武市紀年、他: 医学のあゆみ. 136. 379-380 (1986)
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[Publications] 武市紀年、他: 北海道医学雑誌. 61. 471-472 (1986)
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[Publications] 波江野力、他: 免疫薬理. 5. 137-139 (1986)
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[Publications] Yoshida,M.C.et al: J.Hereditary. (1987)