1986 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯熱マラリア生殖母体形成の人為的誘発とその機序の解析
Project/Area Number |
61570193
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 忠相 阪大, 微生物病研究所, 助教授 (60029783)
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Keywords | 熱帯熱マラリア / 生殖母体形成 / 生殖体形成 |
Research Abstract |
先に抗熱帯熱マラリア原虫に対する抗体を産出するhybridoma細胞の培養上清液を用いてこの原虫の生殖母体形成を人為的誘発することに成功した。そこで、昭和61年の研究として、1.生殖母体形成誘導活性物質の解析、2.生殖母体形成機序の解明の2点を計画した。1.の研究については現在進行中であり、成果が得られているが繰返した研究が必要な段階である。2.の研究に関しては誘発された生殖母体の生存日数が4〜5日間と短かかったため、まず、誘発された生殖母体の生存率を高めることが重要であると考え、研究計画に記載していなかったが、生殖母体の培養培地、培養条件などを検討した。その結果、下記の培地と培養方法を用いると生殖母体の生存日数の延長が顕著にみられ、2週間以上も生存することがわかった。方法は10%の割合に人血清あるいは馬血清を加えたRPMI1640培地で原虫を培養し、培養5日後、8〜10%のparasitemiaを示す時、生殖母体形成誘発液を24時間作用させる。その後は、1μg/ml(最終濃度)のパラアミノ安息香酸を加えたWaymouth培地を用い、培養4日目からは直径6cmのpetri dishで、candle jar法で培養する。培養した原虫の形態観察であるが、培養中の原虫を含む血液の厚層塗抹標本を作り、乾燥を防ぎつつ、15〜30分放置すると鞭毛脱出現象が観察された。また、電顕によって生殖母体を調べると生殖母体の表面に赤血球が膜状構造として痕跡的に附着するか、あるいはそれすらも残らず、次の時期への発育をうかがわせる所見が得られた。このような生殖体形成は通常、蚊の中腸内でおこる現象であるが、原虫の培養条件を検討した結果、生殖母体が長く生存出来るようになり生殖体形成がin vitroでみられるようになったわけである。
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