1987 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯熱マラリア生殖母体形成の人為的誘導とその機序の解析
Project/Area Number |
61570193
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 忠相 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (60029783)
|
Keywords | 熱帯熱マラリア / 生殖母体形成 / 生殖体形成 |
Research Abstract |
先に抗熱帯熱マラリア原虫に対する抗体を産生するhybridoma細胞の培養上清液を用いて熱帯熱マラリア原虫の生殖母体形成を人為的に誘発することに成功し, 更に昨年度の研究により, 誘発した生殖母体の培養維持が可能になった. 昭和62年度の研究として, 1.生殖母体形成誘発が従来から用いてきた株以外の株にもみられる現象がどうかの検討, 2.生殖母体形成誘発率を高める研究, 3.誘発して得た生殖母体の生物学的活性の保持の検討の3点の研究を計画した. その結果, 1.の研究に関しては従来から用いてきたFVO株以外に0622, FCB1, FCR-3及びR・FCR-3の3株, 1クローンを用いて生殖母体形成誘発実験を行い, その結果, いずれの株においても生殖母体の形成を認めた. 2.の研究に関しては生殖母体形成誘発液及び原虫培養液にハイポキサンチン50mg/l, L-グルタミン500mg/lを加えることにより, 極めて高い生殖母体形成誘発率を得ることが出来るようになった. 3.の研究に関しては, 昭和61年度の研究成果に立脚し, 更に最適な培養条件を検討して生殖母体の培養を行い, その結果, 通常, 熱帯熱マラリア患者の吸血後, 蚊の中腸内でのみ見られる有性生殖後の各発育期をin vitroでの培養下で順次行わせていけることに成功した. すなわち, 人為的に誘発して得た生殖母体の成熟, 雄生生殖母体からの鞭毛脱出(雄性生殖体形成), 雌性生殖体形成, 雌雄生殖体による受精, 融合体の形成, 融合体からの虫様体形成, 虫様体の成熟などの各発育期の完成である. これは無性生殖原虫から人為的に誘発した生殖母体が, 自然に出現する生殖母体と何ら変わらない生物学的活性を持つことを示すものである.
|