1986 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌腸管毒素の構造と活性に関する分子遺伝学的研究-遺伝子改変技術の応用
Project/Area Number |
61570216
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山本 逹男 順天堂大, 医学部, 講師 (80095843)
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Keywords | 大腸菌エンテロトキシン / 遺伝子塩基配列 / 遺伝子進化 / 蛋白構造と活性相関 / コレラ毒素 |
Research Abstract |
毒素原性大腸菌が作る易熱性腸管毒素(易熱性エンテロトキシン,LT)は、構造,機能の両面でコレラ毒素に類似する。ともに、ADP-ribosyltransferase(A1フラグメント)配列をもつサブユニットA1分子と、レセプター結合能をもつサブユニットB5分子から構成される。LTは、さらにヒト病原株が作るLThとブタ病原株が作るLTpに細分類されている。従来の研究で、LTh遺伝子の塩基配列を決定し、LThの全アミノ酸配列を推定した。本年度は、LTp遺伝子の塩基配列を再検討し、LTpの全アミノ酸配列を確立した。また、得られた成績を基にして、LTh,LTp,コレラ毒素の進化と起源について検討した。 1.Spicerら米国研究者によって報告されたLTp・A1フラグメントの配列は間違いであった。LTp・A1フラグメントは、LThやコレラ毒素のA1フラグメントと同じ数のアミノ酸から構成されていた。LTh・A1フラグメントとの差異は、N末端から4番目のアミノ酸がLys→Argに変っただけであった。また、LTh,LTp,コレラ毒素3者の遺伝子は同じ数の塩基で構成されており、遺伝子相互の違いは全て単塩基置換変異によって説明し得るものであった。 2.遺伝子の塩基置換のうち、進化の上でより選択のかからない同義置換だけに注目して計算した結果、LT遺伝子とコレラ毒素遺伝子の分岐が約1億3千万年前にさかのぼると推定された。この分岐は、毒素原性大腸菌がもつ別の腸管毒素・耐熱性腸管毒素I(STI)群の分岐年代に一致するものであった。一方、LThとLTpの分岐はこれよりずっと新しく、約90万年前と計算された。 3.以上の成積を基に、keyペプチドであるA1フラグメントの構造と活性に関する知見を得るべく研究している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] S Kuwahara&N.F.Pierce,eds;Yamamoto,T.;Yokota,T.;Kuwahara,S.: Adbances in Research on Cholera and Related Diarrheas. 3. 193-220 (1986)
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[Publications] Yamamoto,T.;Gojobori,T.;Yokota,T.: J.Bacteriol.169. (1987)