1987 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスを発現ベクターに用いたB型肝炎ウイルスの研究
Project/Area Number |
61570231
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
湯浅 田鶴子 国立予防衛生研究所, 腸内ウイルス部, 主任研究官 (80100105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮村 達男 国立予防衛生研究所, 腸内ウイルス部, 室長 (90100099)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / アデノウイルスベクター / HBs抗原 |
Research Abstract |
B型肝炎ウイルス(HBV)の培養細胞での増殖は限られており効率がわるい. HBV(サブタイプadr)の87%(2.8kb, Bgl II断片)を組み込んだアデノウイルス5型(Ad5-HBL)が作成され, このウイルスを用いてHeLa細胞で8種類のHBVmRNAが発現することが明らかにされている. このうち主な3種類のRNAはHBV表面抗原(HBs抗原)のPreS1とS領域をコードするラージHBs抗原遺伝子, S領域をコードするメジャーHBs抗原遺伝子及びX遺伝子に由来する2.4kb, 2.0kb及び0.7kbのRNAである(J.Virol, 1985.Saito). この組み換えウイルスは感染域が広い, 感染後HBVDNAの高いコピー数を効率よく得られる. 又導入されたHBVDNAの上流には外来のプロモーターがないために転写されるmRNAはHBV本来のプロモーターから読まれている等の理由により抗原発現の特異性を比較検討するのに適当な系と考えられるので12種の細胞株〔(ヒト細胞)HeLa, KB, Hul-1(肝細胞株), JHH-4(肝癌由来), WI-38, (サル由来細胞)CV-1, Vero, (マウス由来細胞)3T3, L細胞, C127, (ラット由来)3Y-I, RLC-10(ラット肝細胞由来)〕に感染し発現するHBVmRNAをS1法で検討した. ラージHBs抗原遺伝子及びX遺伝子を含む5種類の遺伝子群はヒト・サルの細胞では発現するが, げっ菌類細胞ではほどんど発現しないという種特異性がみられた. RIAで定量したHBs抗原はヒト・サルの細胞では細胞内蓄積の割合がたかかったが, マウス・ラットの細胞では培地中に分泌される割合がたかかった. このことは近年明らかにされたラージHBs抗原がHBs抗原の細胞外分泌を阻止するという事実と一致している.
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