1986 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージの選択的阻害剤である2-クロルアデノシンの作用機序解明とその利用法
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61570249
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
斎藤 卓也 近大, 医学部, 助手 (30101398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 淳二 近畿大学, 医学部, 教授 (30088520)
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Keywords | 2-クロルアデノシン / アデノシン / マクロファージ / 促進拡散 / プリンサルベージ回路 / アデノシン3リン酸 |
Research Abstract |
61年度は2-クロルアデノシン(2-ClAdo)の作用機序解明であり、「なぜマクロフアージ(Mφ)だけが2-ClAdo処理によって急激な細胞内ATP量の低下が起こるのか」という点である。検索は下記の2点であった。(1)Mφのプリン体代謝に対する影響と(2)エネルギー(ATP産生系)代謝系(呼吸鎖・解糖系)に対する影響である。(1)に関して、最初にプリン体の細胞内へのmembrane transport(促進拡散;uptake)への影響を調べた。その結果2-ClAdo処理後(1時間)のMφはアデノシンやグアノシン等のプリン体の細胞内へのtransportが強く抑制されていた(1μMの低濃度でも抑制効果が検出)。同じ促進拡散で細胞内transportされるアミノ酸に対してはその抑制効果は比較的弱かった。過剰のアデノシンが2-ClAdoと共存した場合transportの抑制効果は見られなかった。一方この抑制効果Mφに対してだけ見られ、好中球やリンパ球に対しては何ら影響をおよぼすことなく、選択性が示された。次にプリンサルベージ代謝回路の酵素系(Mφのcell lysate作製;adenosine kinase,adenosine deaminase,adenylatekinase,5'-nucleotidase)に対する2-ClAdoの影響は、全て阻害あるいは促進効果もなく否定的であった。(2)のエネルギー代謝系に対しても2-ClAdoの影響は見られなかった。以上の結果より2-ClAdoが選択的にMφの細胞膜に何らかの影響をおよぼし、アデノシンの細胞膜transportを抑制し細胞外からのアデノシンの供給を遮断する。最終的に細胞内でアデノシン飢餓状態が起き、ATP量低下が導びかれたと推察する。この場合細胞膜に関連した他の機能、例えば膜レセプター結合能やecto-enzyme活性は2-ClAdoで抑制されないことより、特異的に膜の促進拡散に関係したキャリアー蛋白(例えばpermease)への作用が考えられる。今後Mφの物質の膜透過あるいは具体的にMφの細胞膜の何への影響なのかという観点からの検索が必要と考える。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 斎藤卓也: 医学のあゆみ. 137. 631-632 (1986)
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[Publications] Junji,Yamaguchi: Proc.XIth Int.Cong.on Electron Microsc.3. 2631-2632 (1986)
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[Publications] 斎藤卓也: 近畿大学環境科学研究所研究報告. 14. 175-177 (1986)
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[Publications] 斎藤卓也: 医学のあゆみ. 140. 261-262 (1987)
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[Publications] Takuya,Saito: Microbiol.Immunol.