Research Abstract |
組織学的に慢性肝炎と診断された患者が, どのくらいの経過で, どれくらいの割合で肝硬変・肝癌に移行していくを解明することを目的として, 今回の研究を開始した. 保存した記録が利用可能な1973年から1982年までの10年間に, 順天堂大学附属病院に入院した慢性肝炎, 肝硬変の診断名を持つ2314名の病歴を調査した. 肝生〓の記録のないもの, 脂肪肝, 急性肝炎および肝癌の診断のついた者を除外して, 約1200例が解析対象となった. 各症例につき, 氏名, 生年月日, 性, 肝生〓年月日, 初診年月日, 現住所, 本籍, 飲酒歴, 喫煙歴, 輸血歴, 急性肝炎既往の有無, 家族歴, HBウィルスマーカーを診療録より, 所定の調査票に記入し, コード化してコンピューターに入力した. 一方, 法務局の許可を得て, 生死の確認および死因の把握のため, 戸籍および死亡診断書の照会を実施中である. 1988年3月20日までに調査終了した症例, 肝硬変391例(男284, 女107), 慢性肝炎 673例(男497, 女176)についての中間集計の結果では, 1986年12月末までの死亡が, 肝硬変144例(男116, 女28), 慢性肝炎81(男58, 女23)である. 10年生存率は, 肝硬変男36.0%, 女59.5%, 慢性肝炎男83.0%, 女79.8%であった. 死因に関しての調査を続行中であるが, 現在の結果からは, 慢性肝炎の肝癌への移行はきわめて少なく, 影響する要因の解析は困難と予想される. しかし, 肝硬変からの移行がかなりあるので, これを中心に解析を進める予定である.
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