1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)における自己抗体の産生機序
Project/Area Number |
61570312
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
坂根 剛 島根医大, 医学部, 助教授 (40127519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 宏行 島根医科大学, 医学部, 助手 (90135905)
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / Bリンパ球活性化機序 / Bリンパ球異常活性 / Staphylococcus aureus Cowan 【I】 / B細胞増殖因子 |
Research Abstract |
全身性エリテマトーデス(SLE)ではB細胞のポリクローナルな異常活性が病像形成のベースになっている。ヒトB細胞の活性化機序に関してこれまで1.抗原がB細胞上の免疫グロブリン(Ig)レセプターを架橋して直接に、あるいはT細胞との相互作用の下でB細胞の活性化が起こり、2.これに適当なリンホカイン由来アクセサリーシグナルが加わって増殖し、3.一部はさらにIg産生細胞に分化することがわかっている。しかしStaphylococcus aureus Cowan【I】(SAC)刺激によるin vitro実験系を用いた本研究における成績は、必ずしも全てのBリンパ球がこのような活性化機序を介して分化するのではなく、1.一部のB細胞は活性化されたあと増殖することなく直接にIg産生細胞に分化すること、2.一部のB細胞は活性化によって増殖し、増殖時期にアクセサリーシグナルが加わるとIg産生細胞に分化するが、大部分は増殖のみでとどまり、再刺激によって1g産生細胞に分化することを明らかにした。3.さらに、直接Ig産生細胞に分化し得る細胞は低比重の大リンパ球で、活性化によって主に増殖する細胞は高比重の小リンパ球であることを証明した。これまでSLE患者のB細胞の異常活性については、生体内ですでに活性化されている情況証拠は報告されているが、実際にin vitro刺激でB細胞の高反応性を証明した成績はなかった。しかし、活性化B細胞を除去し、静止期B細胞のみを採集することによって、世界で初めてこの問題を克服した。すなわち、1.SAC刺激したSLE静止期B細胞の増殖開始時期は正常B細胞よりも速やかに起こり、且つ高反応を示した。2.一方、B細胞が高反応を示さなかった患者ではT細胞によるB細胞増殖因子の産生が著明に亢進していた。このようにヒトSLEについてもモデルマウスと同じように、Tループス,Bループスの存在することが明らかになり、SLE発症機序の差異によってサブセットに区分できることが示唆された。
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Research Products
(23 results)
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[Publications] 鈴木登: 日本血液学会雑誌. 49. 1396-1403 (1986)
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[Publications] Sakane,T.: J.Immunol.137. 3809-3813 (1986)
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[Publications] 鈴木登: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] 村川洋子: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] Sakane,T.: Arthritis Rheum.(1987)
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[Publications] 村川洋子: 内科宝函. (1987)
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[Publications] Suzuki,N.: J.Immunol.(1987)
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[Publications] 小谷宏行: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] Murakawa,Y.: J.Immunol.(1987)
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[Publications] 坂根剛: 免疫薬理. 4. 148-156 (1986)
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[Publications] 小谷宏行: 臨床医. 12. 629-632 (1986)
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[Publications] 鈴木登: 最新医学. 41. 2020-2029 (1986)
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[Publications] 鈴木登: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] 鈴木登: Medical Practice('87臨時増刊号). (1987)
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[Publications] 鈴木登: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] 坂根剛: 臨床科学. 23. 143-154 (1987)
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[Publications] 坂根剛: Immuno-Advance. (1987)
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[Publications] 坂根剛: 臨床免疫. (1987)
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[Publications] 厚生省保健医療局結核難病感染症課 監修,坂根剛: "難病の診断と治療の手引き" 六法出版社, 26-35(10) (1986)
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[Publications] 山村雄一 編,坂根剛: "免疫の研究" 同文書院, )125-147(23 (1986)
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[Publications] 今村貞夫,小川秀興,植木宏明 編,坂根剛: "皮膚科MOOK No.7エリテマトーデスの臨床" 金原出版, 47-69(23) (1986)
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[Publications] 菊地浩吉,矢田純一,奥村康 編,坂根剛: "Annual Review 免疫1987" 中外医学社, 291-311(21) (1987)
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[Publications] 山村雄一,吉利和 監修,坂根剛: "医科学大系第8巻B 生体の防御機構-免疫応答" 中山書店,