1986 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌発生機序における癌遺伝子および細胞増殖因子膜レセプターの関与について
Project/Area Number |
61570333
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 延善 金沢大, 医学部, 助手 (60163549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古沢 明彦 金沢大学, 医学部, 助手
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Keywords | 肝細胞癌 / 癌遺伝子 / 細胞増殖因子 / 膜レセプター |
Research Abstract |
近年、肝細胞癌の発生にB型肝炎ウィルスなどの関与が明らかにされつつあるが、発癌の機序に関しては、未だ不明な点が多い。一方、癌遺伝子が細胞増殖、分裂の制御に重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこで、今回、肝細胞癌と癌遺伝子、ならびに各種細胞増殖因子膜レセプターとの関連を検討するため、各種ヒト肝細胞癌由来培養細胞(PLC/PRF/5,Hep G2)における癌遺伝子の発現状況、さらにinsulin,EGF(epidermal growth factor)およびIGF-I(insulin like growth factor-I)などの細胞増殖因子の細胞膜レセプターを検討した。1.各種ヒト肝癌細胞における癌遺伝子のmRNAとDNAの検出はQuick-【Blot^(TM)】Kitを用い、癌遺伝子のうちmyc,erbB,erbA,fos,Hras,Kras,Nras,sis,abl,raf,fes,srcをプローベとしてautoradiographyにより測定した。また各細胞においてヒトEGFを100mg/mlの濃度で培養液中に添加し、各細胞の各種癌遺伝子の発現量の変化を経時的に検討した。その結果、PLC/DRF/5細胞,HepG2細胞とも検索した全ての癌遺伝子のmRNA,DNAが検出され、そのうちablおよびfesではmRNA,DNAとも他の癌遺伝子に比しやや増加していたが、両細胞間で有意な差は見られなかった。またEGF添加による各癌遺伝子発現の経時的変化の検討では、DLC/PRF/5細胞HepG2細胞いずれにおいても有意な変化は認められなかった。2.PLC/PRF/5細胞およびHepG2細胞において【^(125)I】-insulin,【^(125)I】-EGF,【^(125)I】-IGF-Iを用いたradioreceptor assayでの検討では、PLC/PRF/5細胞およびHepG2細胞いずれの細胞株でも【^(125)I】-EGFの結合率は高く、【^(125)I】-insulinの結合率は低かった。一方、【^(125)I】-IGF-Iの結合率は、PLC/PRF/5細胞においてHepG2細胞より有意に高値を示した。以上、肝癌細胞での癌遺伝子発現が明らかであり、また細胞により膜レセプター動態に差を認めたことから、これらと癌化とが何等かの関連性を有することが示唆された。
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