1988 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソニズムにおける古典的神経伝達物質系と神経ペプチド系機構の相互関係の検討
Project/Area Number |
61570387
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小川 紀雄 岡山大学, 医学部, 助教授 (90033208)
|
Keywords | パーキンソニズム / アミン蛍光 / L-DOPA / コリンアセチル転移酵素 / ドパミン受容体 / ムマカリン性アセチルコリン受容体 / 治療薬 / 抗コリン薬 |
Research Abstract |
本年度の計画である脳の同一試料からアセチルコリン(ACh)の合成酵素であるcholine acetyltransferase(CAT)活性とムスカリン性ACh受容体(mACh-R)の両者を測定できる方法を確立した。この方法を用いてラット脳各部位別に測定すると、CAT活性とmACh-Rの比は脳部位によって著しい差があり、ACh系神経機構の活動を知るためには両者を平行測定する必要のあることを明らかにできた。老齢ラットにおいては両者、ことにmACh-Rの減少が著しいが、パーキンソニズムモデルにおいてはmACh-Rの変化が測定するにもかかわらず、CAT活性にはあまり大きな変化がみられなかった。次にL-DOPA投与による中枢アミン系神経機構の変化を調べた。MPTP処理マウスの線条体のアミン蛍光は著減していたが、L-DOPA投与により回復し、さらに大脳皮質では正常以上に増強した。このことから機能の低下したアミン神経であってもL-DOPAによって機能が回復しうることが判明した。神経ペプチドの中ではソマトスタチン(SOM)とサブスタンスP(SP)が比較的よく変動していたが、L-DOPA投与によっても必ずしも回復するとは限らず、モデルの種類によって差異がみとめらえた。一般に、モデル動物においてはドパミン(DA)-Rが増加し、mACh-Rが減少、SOM-RとSP-Rが増加するが、L-DOPAの〓性投与によって正常値に回復する傾向がみられた。ことにDA-RとmACh-Rとの変動は大きく、パーキンソニズムの病態と治療を考える上でこの両者が最も重要と考えられた。これらの実験結果を基礎に、パーキンソニズムの治療薬を考えなおしてみると、機能低下したDA神経であってもL-DOPA投与で機能が回復し、治療効果がみられることは当然としても、それに伴ってmACh-Rが線条体で増加するので、抗コリン薬を併用することが好ましいことが指摘できる。このように、モデル動物の生化学的研究から、治療薬の組合せの方法を考えることが可能なことを本研究して明らかにした。
|
-
[Publications] Mizukawa,K.,et al.: Res.Commun.Chem.Patol.Pharmacol.59. 121-128 (1988)
-
[Publications] Ogawa,N.,et al.: Brain Res.451. 115-118 (1988)
-
[Publications] Ujike,H.,et al.: Brai Res.453. 136-142 (1988)
-
[Publications] Hara,K.,et al.: Neurochem.Res.13. 951-955 (1988)
-
[Publications] Shimada,S.,et al.: Neuroscience. (1989)
-
[Publications] 小川紀雄: "「新生理科学大系」「第14巻神経内分泌学」" 医学書院, 18 (1988)