Research Abstract |
片腎摘出後, 残存した腎にセロファン腎周囲炎を発症させることで作製した高血圧ラット(WKY, ♀, 8W)について, 高血圧の進展とそれに伴う心肥大を観察するとともに, 高血圧発症9カ月と12カ月のラット群において, 摘出灌流心標本を用いて, 左室収縮・拡張機能を測定し, 加齢と高血圧による心肥大がこれらの段階で心機能異常をもたらすか否かを検討した. 方法:ラットの血圧は尾動脈を用い, 非觀血的に測定した. 摘出した心臓は, Krebs-Henseleil改液を用い, 測定した尾動脈最高血圧の70%の圧にて, 大動脈より遂行性に灌流した. 左心機能は, 左室内にバルーンを挿入し, 等容収縮を行なわせながらバルーン容積を変化させ, 各段階での圧を分析することで測定した. 結果:9カ月齢において, 血圧と心重量は高血圧群において対照群に比して有意に増加していた(172±26vs 245±29mmHg, P<0.05, 2.8±0.4vs 4.2±0.1g/kg, P<0.05, mean±SD n=6). 左室拡張終期圧(EDP)10mmHgで比較した収縮機能は, 収縮期圧(152±19vs 183±30mmHg, P<0.05), 左室圧一次微分(3097±525vs 3776±747mmHg/s, P<0.05)と肥大心において良好であったが, 心肥弛緩特性の指標である左室圧下降曲線の時定数Tは, 30±3vs 34±4ms, P<0.05と逆に延長していた. しかし, 拡張期圧一容積曲線には差が見られなかった. 30分の低酸素灌流では, EDP(24±4vs 36±10mmHg, P<0.05), T(34±3vs 39±4ms, P<0.05)と肥大心における拡張機能障害の出現が明らかになった. この傾向は, 12カ月齢でも同様であったが, 圧負荷に対する肥大による代償機序の破綻を確認するためには, 更に時間経過を追う必要があることが明らかになった.
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