1988 Fiscal Year Annual Research Report
虚血心臓の再灌流障害発症機序の解明とその予防法の開発
Project/Area Number |
61570422
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金出 英夫 九州大学, 医学部, 教授 (80038851)
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Keywords | 再灌流心筋障害 / カルシウム過剰負荷 / カルシウムパラドックス |
Research Abstract |
心筋のCa代謝変化を直接、生体で連続観察できる光学的方法を開発し、これを用いて、乳児ラット心臓のCaパラドックス心筋障害におけCa動態変化を調べ、Ca過剰負荷と心筋障害の関係を検討した。〔方法〕乳児ラット心臓をランゲンドルフ法で定圧灌流(40cm水柱圧)した。灌流液としては1.3mMCacl_2および5.5mMブドウ糖を含むCarbonate緩衝液を用いた。摘出心臓にCa指示色素フラ2/AMを取り込ませた後、無Ca液で5分間灌流し、さらにCa再灌流を行った。我々の開発による表面蛍光2波長励起測光システムを用いてフラ2蛍光を測定し、細胞質Ca濃度(Ca)iの指標とした。灌流液中のCPK量を測定し、心筋細胞障害の指標とした。〔結果〕生後8日目以前のラット心臓では、無Ca灌流によって(Ca)iは次第に低下し定常状態となった。(121→31nM)。この際、心拍動は停止した。5分後に1.3mMCa液を、再灌流すると(Ca)i正常値に戻り、CPKの漏出は認められなかった。生後9日目から14日目のラット心臓では、Ca再灌流後、(Ca)iは上昇し定常状態となり(187nM)、Ca過剰が認められた。しかし80%の心臓が収縮を回復し、CPKの漏出は認められなかった。80cm水柱圧で定圧灌流した成熟ラット心臓ではCa再灌流後、(Ca)iの上昇に伴ってCPKが漏出し、電顕的にはcontracture bandが認められた。〔総括〕生後8日目以前のラット心臓では、Ca過剰負荷も心筋障害も起らなかった。生後9日目から14日目のラット心臓では、ca過剰負荷が出現したにも関わらず、心筋障害は認められなかった。成熟ラット心臓では、明らかなCaパラドックス心筋障害が認められた。したがって、Caパラドックスにおける心筋障害の発現には、Caの過剰負荷のみならず、心筋細胞の成熟に伴う膜機能(特にイオン交換機能)あるいは、構造の変化を必要とすると考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Kanaide.: Circ Res. 63. 16-26 (1988)
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[Publications] N.Miasiro.: Biochem Biophys Res Commun. 156. 312-317 (1988)
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[Publications] J.Sadoshima.: Am J Physiol. 255. H410-H418 (1988)
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[Publications] H.Kai.: Biochem Biophys Res Commun. 158. 236-243 (1989)
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[Publications] J.Nishimura.: Arzneim Forsch.
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[Publications] T.Matsumoto.: J.Biol Chem.