1986 Fiscal Year Annual Research Report
小児悪性腫瘍細胞における癌遺伝子の形質発現に関する研究
Project/Area Number |
61570458
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 丈夫 広島大, 医学部, 助手 (50127669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇 千明 広島大学, 医学部附属病院, 医員
小林 正夫 広島大学, 医学部, 助手 (00162016)
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Keywords | 癌遺伝子産物 / Ras-p21 / 小児悪性腫瘍 |
Research Abstract |
本年度の研究では癌遺伝子の一つであるras遺伝子の正常組織や癌組織における形質の発現を、抗ras-p21抗体(Tanaka T.et al:Proc Natl Acd Sci USA 82:3400,1985 & Tanaka T.et al:Cancer Res.46:1465,1986)を用いた免疫組織化学的方法にて検討し、以下の結果を得た。1.ラットの脳、肺臓、脾臓、胸腺などにおけるras-p21の臓器特異発現は既に報告した(Tanaka T.et al:Mol Cell Biochem 70:97,1986)。今年度はこれに免疫組織化学的検討を加え、腎遠位尿細管上皮細胞、脾臓内の巨核球、大脳神経細胞、小脳プルキニエ細胞、肺胞上皮細胞などに細胞特異性の発現を、また、脾小節(胚中心を含む)と胸腺髄質に領域(組織)特異性を示すras-p21の発現が観察された。この結果は、正常細胞の機能分化とras遺伝子の形質発現の関連を示唆する興味ある所見である。(Tanaka T.et al:Mol Cell Biochem in press,1987)2.代表的小児悪性腫瘍である神経芽細胞腫に発現するHa-ras p21を、免疫組織化学およびWestern blotting法にて検討した。腫瘍細胞内のHa-ras p21の発現量は患者の生命予後と強い相関性を示した。Ha-ras p21発現の多い腫瘍はstage 【I】&【II】の予後良好な症例に多く、逆にHa-ras p21発現の乏しい腫瘍はstage 【III】& 【IV】の腫瘍進展群に多く、かつ、生命予後不良であった。この結果は、ras遺伝子の細胞分化に関わる新らたな機能を示唆すると同時に、患者の予後(リスク)推定などに関する腫瘍マーカーとしての臨床的有用性が期侍できる(論文作製中)この点に関し、更に症例数を増し検討を継続している。3.神経芽細胞腫のみならず、各種小児悪性腫瘍にあける癌遺伝子の形質発現の特徴解析も継続中である。4.詳細な分析の為、必要な特異抗体の新らたな作製の試みも引き続き行っている。
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Research Products
(2 results)