1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト血球をモデルにした過酸化反応の解析および抗酸化酵素の動態について
Project/Area Number |
61570477
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
小林 陽之助 関西医大, 医学部, 教授 (50034062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 厚 関西医科大学, 医学部, 講師 (30121966)
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Keywords | 酸化障害 / 脂質過酸化反応 / 活性酸素 / 過酸化水素 / 腎不全 / 透析 / 食細胞 |
Research Abstract |
1.ヒト赤血球溶血を指標とした酸化障害解析のモデル系の確立。 ヒト赤血球を、それ自体では溶血を惹起しない程度に希釈した界面活性剤を含むクエン酸緩衝液加生理食塩水に浮遊させ、触媒として硫酸アンモニウム第1鉄を添加した溶血系を作成した。本反応液を37℃に孵置すると、20〜30分後に溶血が始まり、その後速やかに進行して、60分でほぼ完了した。時間と溶血との関係はS字状の曲線を示した。反応液を最初から氷水中に孵置すれば60分後でも溶血はみられないが、37℃で20分孵置後氷水中に移し、その後60分まで静置すれば、20分で溶血陰性であっても、かなりの程度の溶血が認められた。この事実は、肉眼的に溶血が明らかになる前から膜の障害が進行していることを示唆するものである。ついで抗酸化剤であるヒスチジンを0時間で本反応系に添加したところ溶血は完全に抑制されたが、37℃で反応開始5分後に添加し60分まで孵置した場合には阻止効果は認められなかった。つまり抗酸化剤は膜障害の極めて初期にのみ作用するものと考えられた。血清蛋白にも溶血阻止効果があり、本反応系により各種病態の血清抗酸化能および血球の酸化障害に対する脆弱性をさぐることも可能となる。その方面の検索を今後の計画として発展させたい。 2.慢性腎不全患者の末梢血好中球の酸素代謝と貧食能 慢性腎不全患者は易感染性を呈することが多いが、起炎菌は大部分カタラーゼ陽性・過酸化水素非生産菌である。この関連性に注目し、本症患者の食細胞機能と透析について検討した。食細胞代謝物質の一種であるPMAの刺激による過酸化水素産生能および異物貧食能を指標としたところ、患者血球機能は透析前には低下していたが、透析後には正常に復した。白血球機能の低下と腎機能の低下の程度とはは相関し、透析により除去可能な血清因子が食細胞代謝を阻害するものと考えられた。
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