1986 Fiscal Year Annual Research Report
悪性黒色腫における糖鎖抗原の検索とその診断および治療への応用
Project/Area Number |
61570486
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
斉田 俊明 信大, 医学部, 助教授 (10010381)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽生田 久美子 信州大学, 医学部, 助手
山路 和彦 信州大学, 医学部, 助手 (80126713)
松井 雅彦 信州大学, 医学部, 助手
|
Keywords | 悪性黒色腫 / 腫瘍マーカー / 異好性抗原 / 異好性抗体 / シアル酸 / 混合受身凝集法 / Hanganutziu-Deicher抗原 / 腫瘍関連抗原 |
Research Abstract |
転移しやすく、悪性度の高いことで知られる悪性黒色腫は、また免疫学的にきわめて興味深い腫瘍であって、各種の腫瘍関連抗原の存在が明らかにされている。これらの抗原の多くはマウス草クローン抗体を用いて固定されたものであり、通常、ヒトに対する免疫原性は認められない。また、これらの抗原の多くは糖蛋白ないし糖脂質であって、しかもその抗原決定基にはシアル酸が密接に関与していることが示されている。今回、われわれは培養ヒト悪性黒色腫細胞にヒツジ血球と共通する抗原が表現されており、悪性黒色腫患者血清中にはこれらに対応するIgG抗体の存在していることを混合受身凝集法(MPHA)にて明らかにすることができた。この抗原-抗体系の解析をさらに進めたところ、培養ヒト悪性黒色腫細胞には異好性抗原であるPaul-Bunnell(P-B)抗原とHanganutziu-Deicher(H-D)抗原が表現されていることをFACSにて明らかにすることができた。しかも、悪性黒色腫患者血清中のこれらの抗原に対する抗体の有無をELISAにて検索したところ、抗P-B抗体は検出されないが、IgG型の抗H-D抗体が高率に検出されることが判明した。H-D抗原は、正常のヒト細胞組織には存在しないとされるN-glycolyl-neuraminic acid型のシアル酸がその抗原決定基の主要部分を構成するものであり、ヒト悪性黒色腫におけるこの抗原の発現はきわめて注目される。また、われわれの今回の結果によっても悪性黒色腫関連抗原におけるシアル酸の重要性が示された。従って、メラノサイト系の良性腫瘍である母斑や黒子と、その悪性腫瘍である悪性腫黒色腫およびその初期病変(melanoma in situ)におけるシアル酸を中心とする糖鎖抗原の表現を比較検討することに大いに意義深いものと考えられるので、現在、鋭意研究を実施中である。また、悪性黒色腫患者はH-D抗原に対し免疫学的に反応して、抗H-D抗体を産生している可能性が強いと考えられるので、その意義や診断、治療への応用も検討中である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 斎田俊明 他: 日本皮膚科学会雑誌. 96. 601-607 (1986)
-
[Publications] 斎田俊明 他: 皮膚科の臨床. 28. 1059-1071 (1986)
-
[Publications] Toshiaki Saida,et.al.: Proceedings of the 【VIII】th International Conference on Labelled Antibodies. (1987)
-
[Publications] Hideo Nakarai;Toshiaki Saida,et.al.: International Archives of Allergy and Applied Immunology. (1987)