1986 Fiscal Year Annual Research Report
PAP法及び免疫電顕によるグルタチオンS-トランスフェラーゼの脳腫瘍診断への応用
Project/Area Number |
61570686
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 仁志夫 北海道大学, 大学併設短期大学部, 助教授 (10155848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤岡 保範 北海道大学, 医学部, 講師 (40002282)
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Keywords | グルタチオンS-トランスフェラーゼ / 転移酵素 / 酵素抗体法 / 免疫組織化学 / 脈絡叢 / 脳腫瘍 / 病理組織診断 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は主として肝で作られる解毒酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)に対する抗体を用いて、免疫酵素組織化学的検索および免疫電顕的検索を行い、ヒト脳腫瘍の病理診断における補助診断法のひとつとしてのGSTの有用性について検討を行うことにある。 この目的達成のための第1段階として昭和61年度は主としてラットを対象とした実験的基礎的研究を行った。すなわち、ラット肝からGSTを分離,精製し、これに対する抗体を作り、これを一次抗体として酵素組織化学的検索(PAP法)をラット脳組織に施行した。 その結果、ラット脳におけるGSTの分布は脈絡叢および脳室上衣細胞に顕著であり、グリア細胞については、海馬回や小脳小葉分子層のアストログリアの胞体内およびベルグマングリアの胞体等に反応がみられたが、それ以外の部では反応は軽微であった。 また、神経細胞とオリゴデンドログリアでは免疫染色性は全く認められなかった。そして、これまで全く報告のない新しい知見としては第3脳室底部のtanycyteの胞体およびその突起にも明らかなGSTの染色性が認められ、脈絡叢に高い染色性がみられたことと併せて、GSTは髄液産生ならびにその運搬に関る細胞群の代謝において重要な役割を担っていることが推測された。 今後の研究計画としては、ヒト脳組織においても同様なGSTの分布がみられるかどうかが焦点のひとつであり、ヒト剖検例の肝あるいは脳組織から分離,精製されたGSTでこれを確認する必要がある。さらに、上記結果からは、GSTによる特異的な補助診断の対象となる脳腫瘍は脳室上衣腫,脈絡叢乳頭腫,そしてある種の星状膠細胞腫などに絞られる可能性が生じてきた。残る2年間にこれらの問題点が徐々に明らかにされてゆくものと考えられる。
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[Publications] NAKAMURA,N.et al.: ABSTRACTS X INTERNATIONAL CONGRESS OF NEUROPATHOLOGY. 55 (1986)
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[Publications] 増田武志: 整形・災害外科.