1987 Fiscal Year Annual Research Report
悪性線維性組織球腫の発生学的及び治療法についての研究
Project/Area Number |
61570720
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
北川 敏夫 熊本大学, 医学部, 教授 (10040148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 憲輔 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (50182853)
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Keywords | 発癌剤 / 悪性線維性組織球腫 / 組織球様細胞 / 制癌剤 / 核磁気共鳴法 / 組織培養 |
Research Abstract |
1.ラット膝関節内への発癌剤注入により発生した悪性線維性組織球腫(ラットMFH)に対する各種抗癌剤の効果を担癌ラットを用いて検討した結果, 次の如き知見を得た. アドリアマイシンおよびビンクリスチンで腫瘍増殖抑制効果が認められ, これは核磁気共鳴法による悪性指数の減少および組織学的な腫瘍細胞の広範壊死によっても証明された. 他に検討したシスプラチンやサイクロフォスファミドでは制癌作用は認められなかった. 以上の如く本腫瘍は各種薬剤に対し異った感受性を示しており, 同系統腫瘍に対する有用薬剤の検定に適した実験モデルとなると考えられる. また本腫瘍より樹立した培養細胞系に対する各種薬剤の制癌効果も検討中である. 2.MFHの組織発生に関しては, 既に形態学的および酵素組織化学的検討により一定の知見を得ている. すなわち腫瘍細胞は形態学的に組織球様細胞, 線維芽細胞様細胞など数種類に分類され, 組織球様細胞は貧食能を有し, 組織球の特徴を示した. これらの結果よりMFHには数種の異った性格を有する細胞が混在しており, いずれの細胞が真の腫瘍細胞であるかを明確にすることは, 即治療にも結びつくと考えられる. 以上の目的により, まずMFH試験管内樹立細胞株より数種の単クローン株を分離した. これらの分離株を調べた結果, いずれの株も組織球様細胞の特徴は有していないことが判明した. さらにこれら分離株をラットに移植し作成した腫瘍を組織学的に検討した結果, ラットMFH(親株)と同様の組織像であった. 以上より分離した単クローン株が本腫瘍の本体である可能性が示唆され, さらに本分離株の細胞学的特徴を詳細に検討することにより, MFHの組織発生はより明確になると考えられる. 今後この点に関して, 研究を続ける予定である.
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