1986 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠中毒症における胎児発達遅延の発症病態とその治療に関する研究
Project/Area Number |
61570788
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
杉山 陽一 三重大, 医学部, 教授 (30093131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 隆史 国立津病院, 産婦人科, 医長
伊藤 雅純 三重大学, 医学部, 助手 (00159914)
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Keywords | 妊娠中毒症 / 胎児発育遅延 / 子宮動脈 / 血管内皮依存性弛緩物質(EDRF) |
Research Abstract |
妊娠中毒症の基本的病態の1つとして、全身性の血管攣縮(spasm)が考えられている。一方、胎児発育遅延(IUGR)の発症に決定的な役割を演ずる因子として、栄養素の通過をつかさどるルート、即ち"supply line"の問題が論ぜられてきた。本研究では、妊娠中毒症を一種の血管系疾患としてとらえ、そこに関与する種々の血管作動物質の挙動を、薬理学的手法を用いて検討した。今回は、最近注目されている新しい血管拡張因子(EDRF)について、実験動物を用いて検討した。 対象として、雑種成犬10頭を用いた。麻酔下に脱血屠殺し、子宮動脈を摘出し、ring状標本を作製した。そして、その等尺性張力を測定した。 まず、norepinephrineによる血管収縮の張力が一定になった後に、acethylcholine(Ach)やA23187を添加すると、血管内皮が保たれている場合のみ弛緩反応が出現した。さらに、cyclooxygenase阻害剤のindomethacinによる前処置ではその最大弛緩反応は無処置群と比較して差を認めなかった。一方、lipoxygenase阻害剤のNDGAの前処置によるAchの最大弛緩反応は著明に低下した。これらの反応は、A23187による弛緩反応でも同様の傾向にあった。 以上の結果より、子宮動脈において、AchやA23187により惹起される弛緩反応は、内皮依存性であり、lipoxygenase系を介する反応であることが考えられた。このEDRFの放出抑制は、血管の攣縮とも関連して、妊娠中毒性症やIUGRの成因に何らかの影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。
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