1988 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺上皮のホルモン依存性増殖・分化・退縮における結合織成分の役割
Project/Area Number |
61570794
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Research Institution | Osaka University ・ Department of Obstetrics & Gynecology |
Principal Investigator |
寺川 直樹 大阪大学, 医学部, 講師 (90135690)
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Keywords | 乳腺 / 分化 / コラーゲン |
Research Abstract |
本年度は、乳腺細胞の分化と結合織成分(コラーゲン)の生合成の役割について検討を加えた。1.培養乳腺織識からコラーゲンを抽出、純化し、SDS-PAGEによって分析すると、typeIとtypeIIIのコラーゲンが主な成分であることが明らかとなった。2.ProlineのanalogであるLACAは乳腺組織におけるコラーゲンの生合成を75%抑制した。またLACA添加によってcasein、α-lactalbuminの合成はそれぞれ77%、70%の抑制を受けたが、総蛋白合成に関する抑制はミルク蛋白合成の抑制より小さく、23%にすぎなかった。さらにLACAはcasein、α-lactalbuminに対応するそれぞれのmRNA活性を79%、76%に抑制した。3.LACAによるこれらの合成抑制効果はLACAと同量のprolineを同時に加えて培養することにより消失し、コラーゲン、カゼイン、α-lactalbuminの合成能は元どおりに回復した。4.lysyl oxidaseの阻害剤であり、コラーゲン分子のchoss-linking形成を阻害するβ-APNは0-160μg/mlの濃度で検討したところ、どの濃度においてもcasein、α-lactalbumin合成に影響を与えなかった。5.LACA及びβ-APNの乳腺組織のDNA合成への影響を検討したところ、LACAは80μg/ml、β-APNは160μg/mlの濃度で、DNAへの^3Hーthymidineの取り込みを抑制することはなかった。このことはLACAによる蛋白合成の抑制効果は細胞毒性によるものではないことを示す。以上のことより、乳腺上皮のホルモン依存性分化の過程において、乳腺上皮がその機能を発現するには、乳腺組織におけるコラーゲン生合成が不可欠の条件であることが明らかになった。またコラーゲン分子の形成があれば必ずしも分子のcross-linkingは必要でないことも示唆された。
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