1986 Fiscal Year Annual Research Report
炎症の波及と歯槽骨の動態に関する研究-特に骨破壊部位の質的解析-
Project/Area Number |
61570854
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大家 清 東北大, 歯学部, 教授 (00005042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後澤 孝和 東北大学, 歯科部, 助手 (30186879)
長坂 多賀子 東北大学, 歯科部, 助手 (60178358)
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Keywords | 歯周疾患 / 歯槽骨 / 超微細構造 |
Research Abstract |
ヒト病理解剖体より蒐集した歯を含む新鮮顎骨(126例)を用い、脱灰標本、非脱灰標本を作成し、光学顕微鏡、超音波顕微鏡、マイクロラジオグラフィー電子顕微鏡で観察した。同一部位の標本を種々の機器で観察すること、さらに連続切片を作成することにより、形態学的所見から現象の孝察を正確にし、以下の結果をえた。1.ヒト歯肉炎では、炎症による結合組織の破壊は、瘢痕治癒過程よりは上皮の増殖・延長により速やかに補填された。正常では、結合組織面に対し規則的な稜状の隆起と蜂窩状構造をもつ歯肉上皮基底面は、炎症により、不規則な蛇行と大小不同の椀形の隆起に変化した。2.歯の沈着物は、上皮の破壊(糜爛・潰瘍)を伴った部位で、高度の結合組織の炎症と関連していた。3.歯槽骨頂の破壊は、(1)歯槽頂線維の配列不整をみる初期、(2)歯槽骨頂を被う歯槽頂線維は破壊され、破骨細胞をみる活動期、(3)石灰化を伴う膠原線維をみる休止期に分けることができた。歯槽頂線維の破壊は歯槽骨頂の破壊を促進する。歯肉嚢部では、上皮のセメント質に沿っての延長は、シャーピー線維によって妨げられていた。歯肉嚢部で炎症の軽度の場合は、上皮と新生セメント質の接合、さらに歯肉嚢底部近くのシャーピー線維と骨様セメント質の添加を伴ったセメント質表面との結合がみられた。4.一歯の全周にわたる連続切片の観察により、歯周炎の最初の破壊部位は、皮質骨で被われている頬唇舌側の歯槽骨頂より、骨髄腔の開口の多い槽間中隔部(col)であることが明らかとなった。この部は、宿主の骨破壊抵抗性の小さい部といえ歯槽骨骨髄炎は骨破壊の速度と程度に関与する因子としてあげられる。5.歯肉炎と歯周炎の分類に関しては、(1)上皮の結合組織あるいはセメント質に対する増殖・延長の程度、(2)歯肉を構成する結合組織の破壊の程度とその局在の場、(3)歯槽骨の骨髄炎の有無、などが病理組織学的観察に重要であることが示唆された。
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