1987 Fiscal Year Annual Research Report
歯根未完成歯の生活歯髄切断法に関する病理組織学的研究-庇蓋硬組織, 根管壁添加硬組織の形成に伴う歯齦細胞の変化-
Project/Area Number |
61570916
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
五十嵐 勝 日本歯科大学, 新潟歯学部, 講師 (90168104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 壮郎 日本歯科大学, 新潟歯学部, 助手 (00175853)
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Keywords | 歯根未完成歯 / 生活歯髄切断法 / 組織変化 |
Research Abstract |
歯根未完成の幼若永久歯を有するカニクイザルを実験動物として用い, 無菌的処置の下でCa(OH)_2貼付の生活歯髄切断法を行った. 実験期間は術直後から最長120日までとし, 各実験期間を経て被験歯を摘出後, 直ちに歯冠部を削除し, Karnovsky液で浸漬固定を行った. EDTA液で脱灰し二分した後, 光顕用標本はparaffin包理し, 連続切片を作製後, 各種染色を施した. 電顕用試料はOsmium酸で後固定し樹脂包理後, 超薄切片を作製し, 酢酸ウラン・鉛重染色を施した. 成績としては, 充填物脱落により残存歯髄に細菌感染があった例では, 歯髄表層部に膿瘍形成があり庇蓋硬組織は認められなかった. 細菌感染のない例では, 歯髄には特に著明な炎症反応は認められず, 機械的に切断した歯髄面は挫滅創を呈し歯髄表層にしばしば象牙質削片の埋入を認めたが, chemical surgeryを施すことでは削片は除去され, きれいな切創面に整形された. Ca(OH)_2貼付後の歯髄組織は, 細胞の染色性の低い壊死層の形成が徐々に起こり無構造化を示した. 炎症性細胞浸潤は認められず単に充血, 血管の拡張, 出血などの血管系の変化と新生肉芽組織の増生が観察された. 石化は次第に壊死層周囲のコラーゲン細腺維にも起こり, 経時的に壊死組織を一部埋没する形で骨様象牙質が形成された. 比較的大型で線維芽細胞とは形態の異なる骨芽細胞様の細胞が硬組織形成に関与しているように思われた. 骨様象牙質形成に続いて象牙質新生のない場合もあり, また歯髄切断面のみならず根管壁に沿っても過剰な骨様象牙質の添加があることもあった. 庇蓋硬組織としては骨様象牙質と新生象牙質との両方が形成されることが多く, 未分化の歯髄細胞から大型の細胞, 象牙芽細胞様細胞, 象牙芽細胞へと分化して行くように思われた. 現在電顕標本を引き続き観察中であり, 今後今までの光顕所見と比較検討しながら経時的に庇蓋硬組織形成と歯髄細胞変化との関係を総括する予定である.
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