1988 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸や蛋白質を含む生体液中における歯科用合金の溶出挙動と表面状態に関する研究
Project/Area Number |
61570925
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
市野瀬 志津子 東京医科歯科大学, 歯学部, 技官 (60014156)
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Keywords | 表面状態 / 唾液 / 血清 / 歯科用金銀パラジウム合金 |
Research Abstract |
本年度はアミノ酸や蛋白質を含む生体液中における歯科用合金の表面状態を調べる実験を行った。生体液としては唾液および血清をとり上げ,歯科用合金として市販金銀パラジウム合金をとり上げて,唾液中および血清中に浸漬した金銀パラジウム合金の表面状態を長期間にわたりさらに詳しく調べた。また1%NaCl水溶液につていも同様の実験を行い,生体液とのちがいを検討した。実験に用いた金銀パラジウム合金の組成は前年度の溶出試験で用いたと同じであるが,電顕観察用の試料とするため,溶体化処理後加工を行い箔とした後,CH_3COOH:950ml:HClO_4:50mlの電解液中でジェット研磨して作製した。唾液は無菌で採取した耳下腺唾液を用い,血清は牛胎仔血清を用いた。それぞれの溶液1mlに38℃で無菌で3ヵ月および6ヵ月間浸漬し,透過電顕観察,電子回折,X腺分析を行い,表面状態を調べた。その結果,以下のことが明らかとなった。 1.1%NaCl水溶液に6ヵ月間浸漬した試料表面のX腺分析では浸漬前の試料と比べて何の変化も認められなかった。表面の透過電顕観察および電子回折によっても腐食生成物や他の吸着物等は認められなかった。 2.唾液に6ヵ月間浸漬した試料表面のX腺分析では合金の成分元素のピークに加えてCaとPの強いピークが認められ,Ca/P比はほぼ1.6であった。透過電顕による観察で試料表面は長さ1μmほどの粗い針状結晶で被われていることが明らかとなった。電子回折パターンの回折線からこの針状結晶は水酸化アパタイト(HAP)と同定できた。 3.血清に6ヵ月間浸漬した試料の透過電顕観察により,試料表面は唾液の場合よりさらに細かい針状結晶で被われていることが明らかとなった。電子回折パターンの回折線の面間隔から,血清に浸漬した試料表面の細かい針状結晶も水酸化アパタイト(HAP)と同定できた。
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