Research Abstract |
1.骨細胞増殖因子の精製……前年度・成牛骨から精製した骨細胞増殖因子は, 分子量が20000前後に存在し, 酸や熱処理および変性剤処理に安定な因子であり, 生化学的, 生物学的性質の異なる複数の骨細胞増殖因子の存在が示唆された. 本年度もひきつづき精製を進めたが, いまだ完全精製に至っていない. 現在は骨組織抽出物精製の各ステップにおいて各種細胞株に対する増殖効果に及ぼす影響を検討中である. 2.骨組織抽出物の性質……成牛粉砕骨より1M-NaCl抽出液(N-ext)および, 0.6M-Hclにて脱灰後, 4M塩酸グアニジン抽出液を得, 株化骨芽細胞MC3T3-E1および株化線維芽細胞BALB/C3T3のDNA合成能に及ぼす作用を検討したところ, N-extは1μg/mlの濃度でBALB/C3T3のDNA合成を有意に促進し, 50μg/ml以上の濃度では, コントロールに比し, 20倍以上促進した. MC3T3に対しても, 1〜10μg/mlで約2倍促進したが, 50μg/ml以上の濃度では抑制した. 4M塩酸グアニジン抽出物のうち, 水不溶性分画は, 1μg/mlの濃度でMC3T3のDNA合成を80%以上抑制し, Al-pose活性も抑制したが, BALB/C3T3には, 100μg/mlの濃度でも抑制しなかった. 以上のことから, 骨組織抽出物中の因子が, 骨芽細胞と線維芽細胞に対し, 異なる作用をもつことが示唆された. 3.TGF-βの各種細胞に及ぼす影響……最近, 骨組織中に大量のTGF-βが存在することが確認された為, 上記細胞およびヒト口腔偏平上皮癌細胞HSC-2, 3, 4, 5, 7に対するTGF-βの作用を検討したところ, MC3T3およびBALB/C3T3に対し, TGF-3は, 4M塩酸グアニジン抽出物に非常に似た性質を示した. 又, TGF-βはHSC-4, 7に対し, 強い増殖抑制効果を示した.
|