1986 Fiscal Year Annual Research Report
歯の移動による歯槽骨および歯根膜組織のコラーゲンの動態に関する研究
Project/Area Number |
61570965
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小口 春久 北海道大学, 歯学部, 助教授 (30124689)
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Keywords | 歯の移動 / 矯正力 / 幼若永久歯 / コラーゲン / 型分析 / 架橋結合 / 歯槽骨 / 歯根膜組織 |
Research Abstract |
乳歯列期および混合歯列期において、咬合誘導を目的に、歯の移動が必要な症例は、日常の小児歯科臨床において数多くみられる。この時期は歯根の形成が未完成のため、必要以上の矯正力は加えられず、適切な力が必要であり、その際のコラーゲンの動態をみて、日常臨床の咬合誘導処置において、治療の効果や確実さを一層高めるために本研究は計画された。矯正用ワイヤーからなるセパレイティング・スプリングをラット(100g,♂)の上顎第1大臼歯と第2大臼歯の隣接部に挿入し、歯を移動させる際の歯槽骨および歯周組織のコラーゲン動態を、1カ月にわたって経時的に調べた。 その結果、矯正力が加わった歯槽骨および歯根膜より採取した試料を用いて、中性塩で抽出したコラーゲンの型分類をSDS電気泳動法を用いて検索を行ったところ、1.α(【I】)とα2(【I】)chainの【I】型コラーゲンが多くみられた。2.対照群と比較してα1(【III】)の【III】型コラーゲンが増加した。3.【III】型コラーゲンは3日から5日にかけてその量がきわめて多くなり、その後減少していくことがわかった。また、スプリングを挿入した付近の歯肉にプロスタグランディンを注射し、同様にコラーゲンの型分類を行ったところ、1.【I】型のコラーゲン量は前者と比較してほとんど変化はなかった。2.【III】形コラーゲンの量は、増加していた。3,【III】型コラーゲンは、プロスタグランディン投与後1日目より急激に増加し、その後は除々に減少していく傾向を示した。 以上の結果より、スプリングを用い歯を移動させると歯周組織の災症が起り、単独では3日から5日にかけて最高になり、またプロスタグランディン投与では、即座に災症変化が起り、この時期に歯の移動が顕著になると思われる。現在骨吸収に関与するといわれる諸物質を全身投与し、歯の移動によるコラーゲンの動態をみる予備実験を実施している。今後はlysosomal enzymeの測定も行い、スプリングを入れた場合の変化についても検討していく予定である。
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Research Products
(1 results)