1987 Fiscal Year Annual Research Report
口腔粘膜, 特に歯肉ランゲルハンス細胞の動態に関する研究
Project/Area Number |
61570973
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩本 義史 広島大学, 歯学部, 教授 (90034165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 博司 広島大学, 歯学部, 助手 (20184682)
二階 宏昌 広島大学, 歯学部, 教授 (60028735)
河原 和子 広島大学, 歯学部, 助手 (20034209)
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Keywords | ランゲルハンス細胞 / 歯肉内縁上皮 / 歯肉外縁上皮 / 免疫組織化学 / T6 / HLA-DR / 炎症 |
Research Abstract |
私達は, 重層扁平上皮に常在し, 抗原提示細胞と見なされているランゲルハンス細胞(LC)の歯周炎の発症・進行に果たす役割に興味をもっている. 昨年は, まずLCの同定法を検討し, 次いで正常な表皮と歯肉上皮とを比較した結果, LCの形態並びに分布に相違があることを明らかにした. 本年度は種々の炎症段階のヒト歯肉について, 内縁上皮(歯肉溝上皮, ポケット上皮)と外縁上皮(口腔歯肉上皮)のLCの形態及び分布を調べた. 方法:内縁上皮と外縁上皮を含む30例の歯肉から連続凍結切片を作成し, T6抗原(CD1)並びにHLA-DR抗原に対する酵素抗体染色を施して内縁側と外縁側の上皮1mm^2当りの陽性細胞数を求めた. 炎症状態の評価にはHEとCommon Leu染色切片を用い, 炎症細胞浸潤の程度によって3段階に区分した. 結果:1)内縁上皮と外縁上皮では, T6陽性細胞の形態並びに分布に違いが見られた. 外縁上皮では一般に樹状性が明瞭であるのに対し, 内縁上皮では突起の短い星状細胞様であり全例において外縁上皮の方が内縁上皮より高密度を示した. 炎症が進と, T6陽性細胞密度は内縁上皮では減少し, 外縁上皮では増加しているようであった. 2)HLA-DR染色では, 炎症が強まると両上皮の陽性細胞密度は共に一旦増加するようであった. しかし同一炎症度の内縁上皮と外縁上皮の陽性細胞密度を比較すると, 軽度では内縁上皮の方が高いが, 炎症が進と外縁上皮の方が高くなる傾向が伺われた. 3)炎症度ごとにT6陽性細胞とHLA-DR陽性細胞の密度を比べると, 外縁上皮では常に前者の値が高く, 内縁上皮では, 炎症が強まるとHLA-DR陽性細胞密度の方が高くなった. 以上の結果から, 歯肉の内縁側と外縁側では, LCによる免疫学的監視の程度に違いがあるように思われた. この相違は, 内縁上皮と外縁上皮との本態的差であるのか, 単に歯肉の内縁側と外縁側の炎症程度のずれによるものなのか, さらに検討したいと考えている.
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