1986 Fiscal Year Annual Research Report
ケテンアセタール誘導体のアシル及びシリル基転移反応の開発とその天然物合成への応用
Project/Area Number |
61571002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北 泰行 阪大, 薬学部, 助教授 (00028862)
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Keywords | ケテンアセタール / ケテンシリルアセタール / シリル基転位 / Pummerer型反応 / D-リボース / L-ダウノサミン |
Research Abstract |
エステルのエノール型誘導体であるケテンアセタール体(【1!〜】)は、溶液中で元の安定なエステルに戻ろうとする性質が大きい。申請者らは【1!〜】が溶液中に求核剤(NuH)が存在すると【1!〜】のE(E=acyl又はsilyl基)が攻撃され、定量的にNuEを与える事を見い出した。又この型の反応剤の中でケテンシリルアセタール(【1a!〜】,E=silyl基)は【CH_3】CN中カルボニルやエノン等の下飽和結合を有する化合物と容易に反応し、O原子にシリル基転移を起こした付加体を与える事を見い出し、既にこの反応をシクロペンデノンから香料であるメチルジャスモネートの合成に応用した。 今回61年度の研究計画に基づき順に研究成果の概要を述べる。まず計画1)の【1a!〜】(E=acyl基)の型の反応剤を用いるアミド化反応については殆んど計画通りに完成した。計画2)に関しては、スルホキシド類と【1a!〜】の反応ではSi原子上の置換基の大きさにより異なった反応を起こし、嵩高いt-Bu【Me_2】si基を有する【1a!〜】ではPummerer型反応を起こし、α-シロキシスルフィドを与え、【Me_3】Si基を有する【1a!〜】ではMichael-Pummerer型の反応を起こしたジェステル体を与える事を見い出した。さらにビニル,アリル,プロパギル基の不飽和結合を有するスルホキシド類と【1a!〜】との反応性を明らかにした。計画3)に従いD-glyceraldehydeからD-riboseの不斉合成に成功し、更にこのCH=O基をニトロンに変えた化合物と【1a!〜】との付加反応を検討した結果、このニトロンのβ位置換基が付加体の立体に大きく影響を与える事を明らかにした。このニトロンへの付加反応を利用し、アントラサイクリン抗生物質の構成糖として重要なL-ダウノサミンの不斉合成をはじめ、二,三の光学活性アミノ糖の不斉合成に成功し、現在研究計画に基づき着々と成果があがっているところである。
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[Publications] 北泰行: 薬学雑誌. 106. 269-285 (1986)
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[Publications] 北泰行: 有機合成化学協会誌. 44. 1118-1133 (1986)
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[Publications] 北泰行: Chem.Pharm.Bull.,. 35. 562-569 (1986)
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[Publications] 北泰行: Tetrahedron Letters. 28. (1987)