1986 Fiscal Year Annual Research Report
二次元NMR法による生体膜と薬物との相互作用に関する研究
Project/Area Number |
61571029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒田 義弘 京大, 薬学部, 助手 (90093236)
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Keywords | 膜の運動性 / 局所麻酔薬 / リン脂質 / フォスファチジルコリン / ベシクル / 核オーバーハウザー効果 / 二次元NMR / 関数処理 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画の内"パルス系列の整備"については先ず初めにNOE相関二次元NMR法(NOESY)についてVarian XL-300NMR分光器に標準装備されているVER.5.2及び61cのソフトウェア内のNOESYのパルス系列及びそれによって得られる二次元NMRの等高線表示に必要なウィンドウ関数処理について検討した。その結果Ver.5.2に組込みのパルス系列はホモスポイルパルスを必要とする難点があり、またVer.6.1cのそれは、Jクロスピークを消去するためにミキシング時間τmを一定の範囲で変化さすルーチンを追加する必要があった。一方、関数処理についてはVarian社のソフトウェアに標準組込みされてあるローレンツ-ガウス変換処理[g(t)=exp(t/RE)*exp(-【t^2】/【AF^2】)]を検討した結果、標準組込みのコマンドPSEUDOによって得られるRE及びAF値は本研究におけるようなブロードな【^1H】NMRシグナルの処理には全く不適当であることが解った。ちなみに、同様にブロードなシグナルを与えるタンパク質の【^1H】NMRにおいては既にサインベル関数が最も良いとされている。そのでサインベル関数処理が可能なBruker社のAM400NMR分光器にて測定及び関数計算を行った結果ほぼ良好な等高線表示の二次元NMRスペクトルを得た。サインベル関数処理ができないVarian社の装置ではPSBUDOコマンドによって得られるサインベル様の関数グラフの中心(山)をRIDの取り込み初期の方向へずらす必要があると結論した。この関数処理の応用例として局所麻酔剤ジブカインを含んだレシチンベシクル重水溶液についてNOESYを測定した。その結果、ジブカインの芳香環プロトンとレシチンのコリンメチルプロトンのうち二重層の外側に存在するレシチンのそれとの間にNOEクロスピークが観測できた。このことはジブカインは二重層の内側には浸透して行かないことを意味する。コリンメチルプロトンの化学シフト変化もNOEのデータを支持した。此の原因を膜に結合したジブカイン分子の立体構造にあると結論した。
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